本当の「長期投資」に期限はない!
私は、長期投資に期限はないと考えています。3年から5年程度の運用期間は、長期投資とは言えません。私が考える長期投資の定義からすれば、3年から5年程度では、中期投資にも含まれません。極端な言い方をすれば、短期投資に含まれると考えても良いくらいでしょう。
では、私が思う長期投資というのは、どのくらいの期間を指すのか、ということですが、基本的に、何年以上運用すれば長期投資なのかという定義はない、と考えています。つまり、長期投資に期間はないということです。もっと具体的に言うのであれば、永久に運用することこそ、本当の長期投資といえるのです。
スイスのプライベートバンクなどになると、それこそおじいさんの代から孫の代まで、何代にもわたって、その一族の財産管理を行うということが、ビジネスとして成り立っています。それに近いイメージを思い浮かべて下さい。
もし、あなたがこれから長期投資を志し、毎月数万円程度ずつ積み立てていったとします。その目的は、あなた自身の老後生活に使うお金を貯めるためかもしれません。
でも、だからといって、自分が会社を退職した時から、すっぱりと積立投資を止めたり、投資そのものから手を引いたりするのが正しい行動かというと、それは間違いです。定年を迎えてからも、もし資金的に余裕があるのであれば、積立投資を継続していけば良いし、あるいは積立投資は止めたとしても、引き続き投資信託などを活用した運用は、継続していくべきでしょう。
これからの時代は公的年金の受給額が減らされたり、医療費負担が重くなったり、あるいは海外からのインフレ要因で生活レベルが低下したりするリスクが想定されるので、運用を継続しておいた方が、むしろこうしたリスクから大事な資産を守ることにつながる可能性があるからです。
そして、お金が必要になった時は、随時、ファンドの一部を解約することによって、現金を手にすれば良いです。投資信託は一部解約が可能なので、当面、必要な資金だけを解約し、残りはそのまま運用を継続させることができます。もちろん、なかには財産を全額使い切らず、残して他界される方もいらっしゃると思います。
でも、それはそれで良いのではないでしょうか。残った財産は、そのまま次の代に引き継いでもらえば良いのです。前述したように、プライベートバンクに財産管理をしてもらっている富裕層などは、自分が残した財産を、子々孫々がきちっと引き継いでいけるように、さまざまな対策を講じています。それと同じように、自分の代で使い切れなかったとしても、その財産は自分の子供や孫に引き継いでもらい、より良い使い方をしてもらえば良いのです。
また、自分の子供や孫たちが、世の中のためになる、より良いお金の使い方をしてもらえるようにするためにも、自分がまだ健康なうちに、子供たちにお金の使い方をきちっと伝授する必要があります。あるいは、資産を子孫に残すのではなく、すべて社会に寄付してしまうという手もあるでしょう。自分が生きている間、ずっと運用を継続し、自分が他界する時には、その運用で増やした資産の多くを、広く社会に還元させるために寄付をするというのは、なかなか格好の良いお金の使い方だと思います。
長期投資というのは、そういう格好の良いお金の使い方をするためのきっかけになります。投資を始める前から運用期間を決めてしまうようでは、本当の長期投資とは言えないと思うのです。
つまり、本当の長期投資にゴールはない、私はこう申し上げてこの連載を終わりにしたいと思います。
『投資信託は、この8本から選びなさい。』の中ではほかに
「退職金やボーナスなどまとまったお金があったら一括購入してもいいのでしょうか?」、
「購入した後に注意すべき点はなんですか?」
「生活スタイルが変わってしまい、今まで通りの積立が難しくなったら?」
「『長期投資』は設定後、ほったらかし。これって案外、退屈なんですが……」
「購入時手数料がゼロなのでトクだと聞きました。『直販投信』ってなんですか?」などの質問にも答えています!
セゾン投信株式会社 代表取締役社長
公益財団法人セゾン文化財団理事、NPO法人元気な日本を作る会 情報発信局長。1963年東京生まれ。87年明治卒、クレディセゾン入社。セゾングループのファイナンスカンパニーにて資金運用業務に従事後、投資顧問事 業を立ち上げ、グループ資金の運用のほか、外国籍投資信託をはじめとした海外契約資産等の運用アドバイスを手がける。その後、(株)クレディセゾン イン ベストメント事業部長を経て2006年セゾン投信(株)を設立、2007年4月より現職。米バンガード・グループとの提携を実現、現在2本の長期投資型 ファンドを設定、販売会社を介さず資産形成世代を中心に直接販売を行っている。また、全国各地で講演やセミナーを行い、社会を元気にするための活動を続け ている。『運用のプロが教える草食系投資』(共著:日本経済新聞出版社)、『積立王子の毎月5000円からはじめる投資入門』(中経出版)などがある。
セゾン投信 HP http://www.saison-am.co.jp/
個人ツイッター http://twitter.com/halu04
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