インデックスファンドの選び方や保有ファンド数の絞り込み方などについて、ファイナンシャルジャーナリストの竹川美奈子さんと、資産運用ロボアドバイザー・サービスを展開するウェルスナビ代表取締役CEOの柴山和久さんに聞いていきます(本稿は2022年11月2日に開催した「長期でお金を育てる! ビジネスパーソンのためのコツコツ投資実践法セミナー」の内容に加え、その後の「令和5年度税制改正の大綱等」での決定事項などに即して修正・加筆しました。書籍オンライン編集部)

インデックスファンドのおススメってありますか?<br /><竹川美奈子さん×柴山和久さん 対談第4回>NISAについて知りたいこと Photo: Adobe Stock

インデックスファンド選びで迷った……

――参加者の方からの質問です。

「全世界株式のファンドについて、MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスとFTSEグローバル・オールキャップ・インデックスのどちらがお勧めか、竹川先生のご意見を教えていただけませんか」とのこと。選ぶ基準について、ご意見いただいてもいいでしょうか。

竹川美奈子(以下、竹川) 両者の違いを申し上げますと、MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスは大型株・中型株が中心で分散している企業数も3000社弱ぐらい、対するFTSEグローバル・オールキャップ・インデックスは、規模が小さい小型株も含めて分散しているので、カバーしている企業数も8000~9000と非常に多い、という特徴があります。

 なので、大型株・中型株中心にしたい場合はMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス、より広く多くカバーしたい場合はFTSEグローバル・オールキャップ・インデックスに連動するタイプでいいのではないでしょうか。

 長期的に見ると、それほど値動きは変わりません。ですので、特徴を押さえたうえで、どちらが好みかで決めてもいいのではないでしょうか。柴山さんにも補足していただけたら。

柴山和久(以下、柴山) 長期投資を考えれば大型株だけに偏らないものを選んだほうがいいかなと思います。 ただ竹川さんがおっしゃるとおり、差はほとんどないので、どちらでもいいのではないでしょうか。私たちウェルスナビのサービス上は、明確に客観的な基準に従って「これです」と選びますが、個人で投資される場合は必ずしも杓子定規でなくていいのかなと思います。

保有ファンド数が増え過ぎたときは?

――ありがとうございました。では、別の参加者の方からの質問です。

「低コストファンドが次々できるため、ついつい目移りしてしまい、保有ファンド数が増えてしまっています。取り崩しのことを考えるとある程度本数を集約したほうがいいか迷っています。アドバイスをお願いします」。では、こちらも竹川さんからお願いしてもいいでしょうか。

竹川 そうですね。管理を考えると、同じタイプの投資信託がたくさん増えてしまうのはあまり好ましくありません。同じ株価指数に連動するタイプの投資信託であれば、かなりコストも下がってきていますので、集約していきたいですよね。

 どの口座に持っているか、にもよります。iDeCoであれば預け替えができるので問題ないですが、(23年までに投資した)NISA口座では解約するとその枠が使えなくなってしまうことに注意が必要です。解決策には二つの案があって、一つは、割り切って一つに集約してほかは解約してしまう。もう一つは、多少我慢をしてこのままいき、お金が必要になったときにコストが高いものから解約をして、時間をかけて集約していく。そのどちらかだと思います。

 ただ、いずれにしても、質問者の方が仰るとおり、取り崩しのことを考えるときに複数のファンドがあると解約しづらいので、集約は進めたほうがいいと思います。

柴山 竹川さんがおっしゃった二つの方法のうち、ウェルスナビが採用しているのは、後者の徐々に集約していく方法です。年に一度、銘柄を見直す中で、コストが安い別のファンドに切り替えるということも行っています。その場合も、もともと持っていたものを売って、新しいものに切り替えるということはしていません。そうすると逆に、トータルのコストが上がってしまうリスクもあるので、あくまでも新しく銘柄を選んだら、それを追加で買っていきます。

 さらに、実際にリバランスをするとき、あるいはお客さまが出金される際の優先順位として、コストが高い、もともと持っていたものを優先的に売っていく、という形をとります。

 その際にちょっとやっかいなのが、NISAです。NISAにコストが高いものが入っていた場合どうするかですが、現状のNISA制度では、一度売るとその枠は復活しない形になっていますので、もともと持っていたものを売らないようにしています。非課税メリットのほうがコストを下げるメリットを上回るためです。

新NISAがスタート

――岸田政権が、NISA制度を拡充していくことを「資産所得倍増計画」として訴えてきた中に「NISAの恒久化」が掲げられました。2022年12月の「令和5年度税制改正の大綱等」で、非課税枠の拡大と恒久化の方針が示されています。実際のところ、新制度が運用されるのは、いつ頃からになるのでしょうか。

柴山 通常は、毎年12月に税制調査会から答申が出て、それをベースに翌年の国会税制改正法案が出されます。ただ税制改正法案が国会で成立するとすぐに税が変わるというわけではなくて、実際にはそれを税務署や金融機関が執行していくための細かいルールづくりなど、準備期間が必要なので、施行はさらにその翌年か翌々年になるのが通例です。ですので、年末に発表された方針が、さらに1年後か、通常であれば2年後からスタートというイメージです。

竹川 2022年末に決定された税制改正大綱では、制度の恒久化と非課税期間の無期限化の両方がうたわれました。一般NISAは以前出されていた二階建ての複雑な案が撤回されて、つみたてNISAに今の一般NISAの機能を埋め込む形になり、年間投資額の上限も広がります。具体的には、つみたてNISAを引き継ぐカタチの「つみたて投資枠」年間120万円、一般NISAとほぼ同じ特徴を持つ「成長投資枠」は年間240万円まで非課税投資枠がつかえます。両方の枠は併用が可能なので、年間360万円まで非課税枠が利用できます。また、保有する商品を売却した場合も翌年には非課税枠の再利用が可能になります。2024年からこの新しいNISAに切り替わる予定です。(対談第5回につづく)