積立投資をするうえで税制優遇制度を活用するなら、つみたてNISA(少額投資非課税制度)とiDeCo(個人型確定拠出年金)のどちらがいいのか? 属性による向き・不向きはあるのか? ファイナンシャルジャーナリストの竹川美奈子さんと、資産運用ロボアドバイザー・サービスを展開するウェルスナビ代表取締役CEOの柴山和久さんに聞いていきます(本稿は2022年11月2日に開催した「長期でお金を育てる! ビジネスパーソンのためのコツコツ投資実践法セミナー」の抜粋記事です。書籍オンライン編集部)
つみたてNISAとiDeCo、優先順位はある?
――積立投資をするうえで税制優遇制度を賢く活用するポイントについて伺っていきます。つみたてNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)を、どう選んで活用すればいいのか。竹川さんから伺えますか。
竹川美奈子さん(以下、竹川) はい。私は余裕がある方は、つみたてNISAもiDeCoも両方活用すればいいと思います。両者で比較すると、つみたてNISAの特徴はいつでも解約できる、という点です。ですから、長期的に積立を続けて老後資金に使ったり、積立投資をしつつ利益が出ているときに教育費や住宅の頭金の一部に使ったり、柔軟に利用しやすいです。
一方で、iDeCoは原則60歳まで引き出せないので、目的が老後資金と決まってしまいます。であれば、まず無理のない金額から始める。そして、年に一回は掛金額の変更も可能ですから、物入りなときには掛け金額を減らしたり、共働きで余裕があるときには増やしたりしながら、ライフステージに合わせて活用するのがいいのではないでしょうか。
ただ、例えば所得がない方は、iDeCoは所得控除の恩恵が受けられませんから、つみたてNISAを優先したほうが得策です。それと、公的年金が国民年金のみで退職金がない自営業の方は、小規模企業共済とiDeCoを活用して自分で老後資金を作っていく必要があります。このように、ご自身の属性などによって、どちらがいいかを検討されるといいですね。
柴山和久さん(以下、柴山) 竹川さんがおっしゃるとおり、両方使える方は両方使う、というのは、本当にその通りですね。非課税で投資できる額の上限まで目いっぱい使うことができる方は、ぜひそうするとよいと思います。
そのうえで、ご自身に合った形で何を選ぶかですが、第一に初めて投資をする場合には、iDeCoはちょっと早いかもしれません。自分のお金だけど、預けた後に全く引き出せない、という状態は、経験したことがないし想像がつきづらいですよね。実感がわかないようなリスク、また将来いざというときに引き出せないリスクはとるべきではないと思いますので、初めて投資をするという場合には、いつでも引き出せるNISAのほうが合っているのではないでしょうか。
例えばNISAでの投資に慣れていって、このお金は絶対に老後のために取っておけるという自信があるお金をiDeCoに回していく、というふうに、ステップを踏んでいくといいと思います。
ウェルスナビの銘柄選びがわかるホワイトペーパー
――銘柄の選び方についても、個別商品のお勧めは難しいと思いますが、お二人の基本の考え方を伺えますでしょうか。
柴山 私たちウェルスナビでは7つの資産クラス(米国株、日欧株、新興国株、米国債券、物価連動債、金などコモディティ、不動産)ごとに最良のETF(上場投資信託)を選定しており、ざっくりと下記の条件を確認しています。
・資産クラス全体に対して連動しているか
・純資産総額が増えているか
・流動性が高く取引額が多いか(売りたいときに売れるか)
・外国投資信託の届出に問題ないか
・上記条件を満たしているなかで低コストか
リスク許容度を5段階から選んでいただくので、それによってポートフォリオに含まれる銘柄数は異なりますが、ご自身のお金がどこに投資されているかは透明化していますので、銘柄数はもちろん純資産総額なども各自で確認いただけます。
ウェルスナビの場合は、こうした選定基準だけでなく資産運用のプロセスや手法も含めてホワイトペーパーで公開しています(編集部注:随時改訂されています)。「このペーパーだけ参考にさせていただいて、ウェルスナビは使わずに自分で運用してもいいのですか」とよくご質問もいただきますが、「どうぞどうぞ」とお答えしています。ぜひ参考にしていただけたらと考えています。
――ありがとうございます。竹川さんにも銘柄選びについて伺えますでしょうか。
竹川 まずベースとしてインデックスファンドから買いたい方は、ズバリ、つみたてNISA対象商品の中から選ぶとよいです。日本で買える投資信託の商品は6000本ぐらいありますから、多すぎて選ぶのが非常に難しい。一方、つみたてNISAの対象商品は約200本と、それだけで3.5%ぐらいに絞り込めます。例えば、株式インデックスファンドであれば、どの株価指数に連動する商品にするかを決まれば、あとは保有中にかかる運用管理費用(信託報酬)が低く、残高が安定的に伸びているものを選ぶといいでしょう。
ご参考までに、「モーンニングスター」という投資信託の評価会社のサイトに、「つみたてNISA総合ガイド」というページがあります。指数ごとに商品の絞り込みもできますし、コストが安い順に並べ替えもできます。商品をクリックすると残高が安定的に伸びているかも確認ができるので、使いやすいのではないでしょうか。
アクティブファンドの選び方のポイントとしてよく「5つのP」と呼ばれるように、
・投資哲学(Philosophy)
・投資プロセス(Process)
・投資哲学、投資プロセスに沿った中身か(Portfolio)
・運用体制(People)
・運用実績(Performance)
を確認しましょう。月次レポートを読んだり、ファンドの説明会に参加したりするのが楽しいとか、投資先の訪問ツアーに参加してみたい、と思えるのであれば、一部買ってみるという選択肢もあるとは思いますが、勧められたからではなく、「主体的に」選ぶのが大前提です。(対談第4回に続く)