昨年1月の欧州、10月の米国に続き今年3月、ようやく日本でも「トラスツズマブ(商品名ハーセプチン)」が「HER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発胃がん」の治療薬として承認された。

 トラスツズマブはもともと乳がんの治療薬として開発された分子標的薬だ。治療手段を断たれたHER2陽性の末期乳がん患者に対し、劇的な治療効果を示した「希望の薬」として知られている。胃がんへの適応拡大の根拠となった試験では、HER2を持つ進行・再発胃がん患者に既存の抗がん剤とトラスツズマブを投与すると、抗がん剤のみの場合よりも、明らかに生存期間が伸びた。

 2000年頃から世に出回り始めた新しい発想の抗がん剤──分子標的薬は、無差別攻撃型の既存の抗がん剤に対し、がん細胞特有の分子を狙ってピンポイント攻撃を繰り返す薬である。ターゲット分子が共通していれば、胃がんだろうが乳がんだろうが治療効果を発揮する。