年上部下の目に余る行動に、「一度、ガツンと言わなければ……」と思いながらも遠慮や面倒をさける気持ちから、つい尻込みしてしまう年下上司は少なくないはず。実際に、思い切って注意しても聞き流されたり、反抗的な態度を取られたりすることも。多くの年下上司が頭を抱える、年上部下の上手な叱り方とは?

ルール1
「困っている」「~していただけると助かります」と表現する

「年上部下が自分を差し置いて、若手に勝手に指示を出してしまいます。そのせいで若手も混乱して、自分の思惑とは違うやり方で仕事を進めてしまうので、そのフォローのためにいつも残業しています。何度注意しても、『わかった、わかった』と聞き流すだけで、ついには若手に『アイツはダメだ』と私の悪口まで言っているようなんです。先日は、私もつい感情的に怒鳴ってしまって……。」

 こう打ち明けてくれたのは、IT企業で7人の部下を束ねる42歳の年下上司です。

 部下が年下であれ年上であれ、感情にまかせて叱りつけてならないのは一緒です。しかし、穏やかに丁寧な言葉で伝えようと思っても、次のような物言いでは意味がありません。

×「この見積書、もう一度見直していただけますか?」

 相手に遠慮して、どこをどう直すかがあいまいで、指示されたほうも困ります。

×「この見積書、どこがダメかわかりますよね?」

 これでは相手にイライラをぶつけているだけ。わざとミスしたわけではない場合がほとんどなので、相手は戸惑うだけでしょう。

×「ダメじゃないですか! 納期を守ってくれって言いましたよね?」

 相手を責めるYOUメッセージの言い方なので、年上部下には避けたほうがいいでしょう。

 夫婦ゲンカを思い出すとわかるのですが、人間は、少し引け目のある図星のことを言われたときほど激昂するものです。

「月曜日は生ゴミの日でしょ? 出しておいてって言ったじゃない」と言われると、「いつも忘れてるわけじゃないだろ! お前だって1ヵ月前に1度、忘れたことがあったじゃないか!」と、昔のことをもち出すなどして泥沼の言い争いに発展してしまうものです。

 でもそこで、「あなたしかゴミを出してくれる人がいないので困るのよ」と言われれば、「自分が悪かった。次はちゃんと出すよ」と素直に思えるはずです。当たり前のことを指摘されれば、ムカっとくるのは当たり前。それを、いかに相手の気分を害さずに伝えていくかが大切なのです。

 年上部下との関係もこれとまったく一緒です。連載第1回でお話ししたIメッセージを使い、相手の過失を責めるのではなく、自分が「困っている」「~していただけると助かります」と伝えることで、相手も指摘を受け入れやすくなるのです。

○「納期を守ってもらえないと困るんです。A社の部長は特に納期にうるさいんですよ」

「資料は、この形式でまとめていただけると助かります」

○「会議には、必ず5分前に来ていただけると助かります」