「分配金の多さ」で選んだり、「新商品」だからといって手を出してはいけない!

竹川美奈子(たけかわ みなこ) ファイナンシャル・ジャーナリスト。LIFE MAP,LLC代表。出版社や新聞社勤務などを経て独立。99年ファイナンシャルプランナー資格取得。新聞や雑誌などを中心に執筆活動を行ういっぽう、投資信託やETF、確定拠出年金セミナーなどの講師を務める。
公式サイト http://www.m-takekawa.jp/ 個人ツイッター http://twitter.com/minakotakekawa

竹川 そして2点目は分配金だけでファンドを選ぶ傾向があるということ。

中野 ああ、確かにこういう方も結構いらっしゃいますね。最近「分配金利回り」という考え方もあって、その利回りが高いものを選ぶという方は多いようです。

竹川 でも、分配金って銀行預金の金利とは全く異なるものじゃないですか。

中野 そうなんですよ。仮に分配金が高かったとしても、基準価額が大きく下落してしまったら、トータルで見た時のリターンは大きく下がってしまう。それどころか、損してしまうこともあるわけです。

竹川 確かに、最近のファンドを見ていると、分配金利回りが10%台などという非常に高いファンドがたくさんありますよね。年間の分配金額が900円で、基準価額が5000円だったら、そのファンドの分配金利回りは18%になるわけです。

 でも、分配金を払い出すとその分資産げ減りますから基準価額は下がります。それに、基準価額というものは、そのファンドの投資先となっているマーケットの動向で大きく動きます。いくら年間で900円の分配金が得られたとしても、基準価額が5000円から4000円に値下がりしてしまったら、基準価額で1000円の損が出ているわけですから、トータルで見れば、100円のマイナスになるわけです。投資信託を購入するうえで、これは最低限の知識だと思うのですが……。

中野 そうですね。分配金利回りが高いほどおトクだと思う人が多いということ自体、投資信託があまり理解されていない証拠なのでしょうね。

竹川 特別分配金は非課税だから、「特別分配金」が多いファンドほどおトクだという勘違いとか。

中野 そうなんですよ。特別分配金というのは、運用によって得られた収益の分配ではなく、あくまでも自分が投資した元本の一部が戻ってきているだけですから、運用収益ではないんですよね。

竹川 3点目は新発売のファンドを買ってしまうことです。

中野 どうして新商品にばかり目が行くのでしょうか。

竹川 ここに投資信託の情報格差があると思うのですが、結局、古いファンドはいくら良いものでも、なかなか宣伝してもらえないじゃないですか。でも、新発売のファンドは新聞広告なども含めて、積極的に宣伝しますから、これから投資信託を買おうと思っている方のところに入ってくる投資信託の情報は、どうしても新発売のファンドに偏ってしまう傾向があるのだと思います。

中野 新発売のファンドって、過去の運用実績も分かりませんし、結果的にどの程度のリスクがあるのかを把握することができないものですよね。投資信託を買う場合は、やはり過去の運用実績がきちっと揃っているものから選びたいものです。