ハーバードはじめ名門教育機関は
「教育」で儲けていない

 もう少し大きな例も挙げよう。

 岩瀬氏の出たそのハーバードビジネススクールも、本業である教育事業では儲けていない。むしろ赤字に近い。

図1 ハーバードビジネススクールの寄付は授業料などからなる売上高の5倍近い規模がある(資料:ハーバード大学)<拡大画像表示

 では何が土台となっているのか?

 ひとつは寄付である(図1)。HBS(ハーバード・ビジネススクール)の敷地の中にある建物のほとんどは、成功した卒業生の寄付金によって建てられている。同校の売上高は4.7億ドル(約380億円。1ドル=80円で計算)、費用は4.2億ドル(約330億円)とほぼトントンだが、寄付金は23億ドル(約1840億円)と売上高の約5倍にのぼる。

図2 ハーバード大学基金の運用成績はベンチマークを上回る好成績を収めている(資料:ハーバード大学)<拡大画像表示

 それから年金運用。同大学は収益の実に40%が投資活動によって賄われている。

 運用額は2010年度で276億ドル、日本円にして約2.2兆円と巨額だ。彼らが運用するハーバードのファンドのリターンは、2010年度は11.0%のリターン、過去20年間の年平均リターンは11.9%と主要なベンチマークを上回っている(図2)。

 投資案件も常に一歩先を行く。かつて通常の投資家がBRICsに熱を上げている時に、すでにアフリカに投資をしていた。こういった先進的な投資の収益が大きく寄与しているのである。

 では教育事業でまったく利益を上げていないのか、というとそういうわけでもない。エグゼクティブ(企業幹部)向けの研修は、2週間~1ヵ月で600万円という高額なものだが、ハーバードの名声に引かれて、多くの企業が幹部を送り込んでいる。ここはドル箱である。

 つまりハーバードは、学部や大学院の学費で利益を上げているわけではない。正しくは「教育も行っている投資運用会社」といえる。

 イギリスの名門オックスフォード大学も、その土台は教育事業にない。