「日銀からも(緩和の)流れを変えたいと、内々に言ってきていた。メガバンクとは、マイナス金利導入の際にコミュニケーション不足があって関係が悪化していたから、鈴木さんが委員になれば、それも修復できると考えたのではないか」と財務省幹部は言う。

 こうした日銀の意向を受け、財務省では異次元緩和路線の流れを変えられそうな審議委員の候補ということで、マイナス金利に批判的だった鈴木氏と、もう1人を官邸に推していた。

 結局、期待した「緩和慎重派」は鈴木氏1人しか選ばれず、もう1人は積極的な金融緩和と財政拡大を主張する「リフレ派」と知られる三菱UFJリサーチ&コンサルティングの片岡剛士・上席主任研究員だった。

 だが、審議委員全員が「緩和積極派」で占められるのを何とか回避できたことを受けて、財務省幹部はつぶやいた。「官邸だって、これまでの人事はやり過ぎたと反省したんだろう」と。

国債の買い取りペースが鈍化
「出口戦略」の地ならしか

 図1をご覧いただきたい。これは、日銀が「2%物価目標」を掲げ、2013年4月から導入した「異次元緩和」の概略図だ。

 日銀が、国債や株式、ETF(上場投資信託)などを購入し、「緩和マネー」を市中に大量供給すれば、いずれ「インフレ期待」が醸成されて、物価が上がる…。そうしたシナリオの下でスタートした「異次元緩和」だが、これまで6度も目標達成時期が先送りされてきた。

 実は、そのため財務省と日銀は、路線修正に向けて水面下で動き始めている。あまり知られていないことだが、すでに事務方の間では、いかに「異次元緩和」を縮小し、正常化させていくかといった「出口戦略」の検討を始めているのだ。

 関係者によると、そのシナリオは、まずは「2%物価目標」を、「短期的な目標」から「中長期の柔軟な目標」として位置付け直すこと。さらにそれとセットで、2016年度決算の残高ベースで418兆円を超えている国債の買い取り額について、「いつまでにどれくらい減らすのか」といったスケジュール感を示すこと──などが検討されているという。