人は6分間何もない部屋に残されると、自分に電気ショックを与える

 どうやら、人はひとりでじっくり考える時間を避けるためなら、どんなことでもする気になるらしい。バージニア大学でおこなわれたある実験は、心理学界と神経科学界で物議をかもした。

 実験では、被験者がひとり、部屋に取り残される。室内には、押すと自分に電気ショックを与えることになるボタンだけがある。すると室内に取り残されてから6分以内に、被験者の大半がひとりで考え事をしてすごす不快感に耐えられなくなり、自分に電気ショックを与えるボタンを押した。

 なお、この被験者たちは実験の前に質問をされたときには、「電気ショックを受けずにすむのならカネを払うほうがいい」とまで答えていた。

 ひとりですごす時間を避けていると、どれほど多くのものを失うか、考えてみてほしい。あるイタリアの研究によれば、自分を見つめれば他者に共感する能力を高められるという。

「みずからの感情と経験に触れれば触れるほど、ほかの人の頭にどんな考えがよぎるのかを、より正確に、より豊かに想像できるようになる」

 現代社会は、思考より行動を重視すべく進化をはたしてきた。ところが現実には、じっくりとひとりで考える時間をもつからこそ、日々の生活が有意義なものになる。たった数分でもかまわない、あなたがネットサーフィンに興じて「忙しく」している時間を内省の時間にあてよう。

(本原稿はデボラ・ザック著『SINGLE TASK 一点集中術』から抜粋・編集して掲載しています)