マルチタスクは逆に効率が悪い理由

これまで、多忙な中で生産性を上げるために必須とされてきた「マルチタスク」が、実際にはむしろ「生産性を損なう元凶」だったという研究が、脳科学やビジネス行動学などのさまざまな分野から出てきている。
いま全米で話題となっているデボラ・ザック著『SINGLE TASK 一点集中術』では、ハーバード、スタンフォード、MITなどの近年の膨大な研究成果を背景に、シンプルでありながら効果が高い「シングルタスク」による集中法を紹介している。
その方法とは、いったいどんなものなのか?今回は本書から、訳者自身がその内容を紹介したあとがきを特別公開する。

サクサク動いているわりに、じつは成果がでていない

 いつもマルチタスクをしている人たちは一見、仕事ができるように見えるし、生産性が高いように見えるけれど、実際に成果を測ると、現実は違う。

 本書でも「あたふたとせわしなく働いている社員たちは1日に500回も注意を向けるタスクを変えるが、もっとも能率の高い社員たちは注意を向けるタスクを変える回数が少ない」というハーバード大学の研究結果が紹介されている。この研究では、タスクからタスクへと注意を向ける先を切り替える頻度の高さは、生産性の低さと相関関係があるということが示されている。

 つまり、マルチタスクをせずに1つのことに長く集中している人こそが、質の高い仕事ができるし、生産性も高いというわけだ。そこで、情報やタスクの洪水に流されずに、日々の能率と生産性を大きく引き上げられる方法を説いたのが『SINGLE TASK 一点集中術』だ。

 膨大な情報に悩まされ、やりがいを感じられない日々に焦燥感を覚えていた人がよほど多かったのだろう。本書はアメリカ本国で出版されると一躍、話題の書となり、ドイツやスペインなど世界各国で翻訳され、大反響を呼んでいる。

 マネジメントの世界的権威であるケン・ブランチャードは本書の方法について「ストレスが減り、能率が上がり、質の高い結果を得られる」と絶賛し、自己啓発の方法論で全米ナンバーワンとも評されるブライアン・トレーシーは、「本書は『時間管理』と『自己管理』についてあなたが生涯に読むものの中で最も重要な一冊になるだろう」とまで述べている。