集中できずにあれこればたばたと働いている人の脳はどうなっている?「マルチタスク」の弊害を暴いて全米で大きな話題となったデボラ・ザック著『SINGLE TASK 一点集中術』では、ハーバード、スタンフォード、MITなどの近年の膨大な研究成果から、多角的なアプローチで最も生産的な集中術を提示している。毎日のすべてを「シングルタスク」にする同書の方法とは、いったいどんなものなのか?今回は本書から、集中できていない人の脳の状態と集中力を上げるコツを紹介する。
「集中できていない人」の脳をMRIで見ると?
本書をきちんと読めば、脳に関する驚くような科学的知見を得られる。たとえば、次のような知見だ。
競い合うように押し寄せる多数の刺激に身をさらしていると、脳が縮む。
前頭前野は過剰なストレスにつねにさらされていると、縮んでしまう。扁桃体も萎縮し、恐怖、攻撃、不安といったネガティブな感情が脳に氾濫する。すると脳の灰白質が縮み、認知機能がうまく働かなくなる。
多くの成果をあげようと頑張りすぎると、明晰な思考ができなくなるのだ。度を越した多忙な生活を続けていると、思考と感情をつかさどる脳組織の萎縮を招く。
MRI(磁気共鳴画像)を見ると、競い合うタスクのあいだで脳がもがいているようすがよくわかる。
優先順位をつけることができない複数の要求にさらされると、脳は圧倒され、うまく機能しなくなる。というのも、マルチタスクを試みると、情報処理能力を低下させるコルチゾール(別名ストレスホルモン)が分泌されるからだ。
するとストレスが生じ、脳のニューロン(神経細胞)が萎縮し、問題を解決したり、感情を調整したり、逆境に負けず立ちあがったり、衝動をコントロールしたりする能力が低下する。だから、たくさんのことを同時にやろうとしてカリカリせず、定期的に休憩をとる必要がある。