鴨の治部煮、漬け鮪の大葉巻き天ぷら、鯵のなめろう……
肉や魚と野菜を組み合わせ、蕎麦前料理をたくさん揃えた

 開店当初はお昼をメインにした営業だったが、昨夏を越えたあたりから夜の営業だけに変えた。この辺りは宵っ張りの客が多くいて、「手打茶寮」の蕎麦の美味しさを知ると、夜の営業を求め始めたのだ。

 夜の営業に合わせて肴も多くした。元々、料理が好きで、「おお西」で人寄せがあると腕を振るっていた鈴木さん。鴨の治部煮、漬け鮪の大葉巻き天ぷら、鯵のなめろうなど、肉や魚と野菜を上手く組み合わせ、蕎麦前料理をたくさん揃えた。千葉生まれだから魚の扱いにも慣れている。

焼き鯵と香味野菜のひやかけ。鯵と蕎麦の実験的なひやかけだが、いい相性であることを見つけた。香味野菜が鯵の旨みを引き立てていた。

 蕎麦前のあとはひやかけが美味い。鰹がベースの甘汁は淡い口当たりで、ごくりと飲み干したくなる。あの六十八番札所で迷い、出会った甘汁を心のどこかで追っているという。

 自分がもらった同じ感動を訪れる人へ。それは小さな感動かもしれないが、ある人には大きく響くかもしれない。それが、師匠のいう大きさへのステップかもしれないという。

 この時季は焼き鯵のひやかけが出色だ。蕎麦と鯵の組み合わせは違和感を覚えるかもしれないが、意外や意外に、鯵の焼き加減が絶妙で旨みだけが舌に伝わってくる。香味野菜も焼き鯵とよく絡まって香りがふわりと頬を包む。

 都内で唯一の発芽蕎麦と水こね十割の更科を持つ店。少し蕎麦を齧った人を連れてくれば、会話が途切れない夜になるだろう。

「祈年」
●営業案内
・住所 東京都港区西麻布1-15-9
・電話 03-6447-2308(FAX共)
・営業 月~金18:00~23:30(LO 23:00) 土・日・祝11:30~15:00 18:00~22:00(LO21:30)
●予算:2000~5000円
●HPこちら
●おすすめ:吟穣2色盛り(1250円)で風合いを比べてみたい。十割粗挽き蕎麦も試してみたい。吟穣2色冷天セット(1600円)が人気。
●酒・料理:鴨の治部煮(1200円)を始め鴨料理が4種、鯵料理も3種など酒のあてが多くある。3人以上の会食なら3500円のコース料理(要予約)がいい。
●訪問:夜更けまでの営業なので、遅い時間の会食や接待にも重宝する。
●地図こちら

 

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