10月4~5日、米国ワシントンDCで、世界のレアアース市場で8割強の消費量を占める日米欧の政策担当者や専門家が、一堂に会していた。各国が連携して今後の安定調達の方針、つまり“対中”戦略を練る、初めての会合だ。
レアアースとは、31鉱種あるレアメタルのうち、17元素の総称のこと。自動車や電化製品などの高機能化や軽量化に使われる。現在、約12万トンといわれる世界の需要量の、ほぼすべてが中国から供給されている。
昨秋以降、中国が意図的に価格をつり上げたり、輸出量規制をかけたりした“レアアース危機”は今も続く。種類によっては、価格が下がっているものもあるが、たとえばハイブリッド車の駆動モーター用磁石などに使われるジスプロシウムは、過去1年で約30倍にも高騰した。耐え切れず、「輸出価格の半値で仕入れが可能な、中国への製造拠点移転に動き出すメーカーもある」(大手商社幹部)。
一国供給体制といういびつな構造に、需要国は翻弄された。だが、思うままに市場を支配する中国に対し、各国ともに効果的な戦略を打ち出すことができず、不満が高まった。
そこで、「需要国である日米欧が連携することで、“買い手”としての力を強める構想がにわかに浮かび上がった」(大手商社関係者)というわけだ。中国に対する価格交渉力を強めたり、中国以外での資源開発において協力したりすることが、今後ありうるという。
ただ、産業界からは「この構想は安直」(メーカー幹部)との声が、早くも聞こえている。開発はオーストラリアや米国でも進むが、生産開始までは、中国に翻弄される構造は変わらないからだ。中国以外では見つかりにくいレアアースもある。
ある企業の幹部は、本会合への出席を経済産業省から打診されたが、あわてて断ったという。慎重かつ明確な戦略が打ち出されなければ、「“包囲網”体制は、中国を逆に刺激するだけ」(同幹部)に終わりかねない。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 脇田まや)