ディカプリオが映画で演じた
「泥棒・略奪型」フリーライダー

 『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』という映画をご存じだろうか。2002年に公開されたアメリカ映画で、監督はスティーブン・スピルバーグ、主演はレオナルド・ディカプリオとトム・ハンクス。日本でもヒットしたし、スター揃いの映画なので記憶に残っている人も多いと思う。

 ストーリーの舞台は1960年代のアメリカ、ディカプリオ扮する若き「詐欺師」とそれを追いかけるFBI捜査官役・ハンクスとの鬼ごっこコメディである。劇中のディカプリオは、大学の卒業証明や様々な免許、小切手などの「書類偽造」を得意とする詐欺師で、パイロット、医師などに化けて世界中を転々とする。

 企業や一般人相手に詐欺を繰り返すディカプリオは、拙著『フリーライダー――あなたの隣のただのり社員』で分類するならば、さしずめ「泥棒・略奪型」だろうか。社会を集団と考えれば、立派なフリーライダーだ。

 映画で描かれる詐欺の手口や追いかけっこのストーリーも面白いのだが、この詐欺師がフランスで逮捕され、アメリカに引き渡された後のパートが、私にとっては最も面白かった。

 ハンクスは彼の詐欺履歴を追っているうちに、一点だけどうしても手口のわからないものがあった。彼が弁護士に成りすましたときに使った証明書はどう見ても本物だったのだ。ハンクスは彼に尋ねる。「あの証明書が本物なら、どうやって手に入れた?」と。

 ディカプリオの答えは、「ああ、あれは本当に勉強したんだ」

 ハンクスは、彼がすごい才能の持ち主であることを知る。そしてその才能を信じて、ある相談をする。当時、別件の詐欺事件に使われたニセ小切手がどのように作られたのか、FBIの専門家でもわからなかったのだ。そのことを獄中のディカプリオに相談すると、彼はニセ小切手を一目見たとたんに作成方法を見破ってしまう。