復興財源決定の評価
復興増税という、民主党野田政権下での初めての意思決定が行われた。中身は、所得税・法人税の付加税に加え、たばこ税も時限的に引き上げるというもので、増税規模は10年間で11.2兆円である。
本欄の第3回で、「震災復興財源はドイツにならって所得税と法人税の臨時付加税で調達することが望ましい」と主張してきた筆者としては、基本的に合致する内容なので、高く評価したい。
道路などは60年便益が生じるので、60年間で国債を償還してもかまわない、という意見がいまだにあるが、今回は毀損されたストックを回復するためであり、新たに便益が生じるわけではない。ここで復興費用を60年間先送りすることは、震災を知らない世代も負担するということであるが、はたして彼らは納得するであろうか。復興は国民全員が少しずつ負担してこそ、「連帯」意識が生まれるのであろう。
国債整理基金とか、外国為替特別会計の積立金と言った、時間稼ぎのまやかし手段に惑わされなかったことも、高く評価したい。何度も述べたように、特別会計の積立金に余裕があるなら、国の債務である国債の償還に充てる、これが大原則である。その原則を崩すことは、国家予算管理の基本を変えるということで、それを知らないポピュリズム政党や一部経済学者の議論が排除されたことは、大きな意味を持つ。
いずれにしても、「先延ばし」という日本人の持って生まれた遺伝子を早く断ち切ることが、わが国の経済回復にもつながる。
もっとも、最後まで税外収入の積み上げについて、ごたごたがあったことは、今後の民主党の意思決定が盤石なものではないことを予想させる。前回の本欄で書いたが、民主党が排除してきたはずの、政府・党の二元的意思決定の最も悪いパターンとなりつつあり、これでは、来年3月までに成案を得るとした、社会保障・税一体改革・消費税率の引き上げの決定は、容易ではない。
ごたごたが見透かされた以上、これから始まる3党協議は簡単ではないだろう。