1.安易な資金調達は危険
今回の東日本大震災は、地震、つなみ、原発の3つが複合して被害額は計り知れないものとなっている。すでに、阪神大震災の10兆円の経済損失を超え、20兆円の損害という声も出始めている。そしてその復興には、5年とも10年ともいう年月が予想される。改めて被災地の方にお見舞い申し上げたい。
さて、日経新聞(3月19日1面トップ)によると、政府部内では、中長期的な支援策として、郵便貯金や年金資金の一部を活用した災害復旧ファンドの創設が、有力な案として検討されつつあるという。
私も、基本的スキームとして、復興基金(ファンド)を創設し、復興基金債の発行による資金調達を行うことにより、被災地・被災者への支援(財政支援・投融資)を行うスキームを、復興マスタープランとともに早急に整備する必要があると考える。その際の問題は、10兆円を超える可能性もある巨額の復興基金債をどう償還するのか、議論しておく必要がある。
すでに、「被災地復興のための財源は、10兆円規模の国債を発行して、これを日銀が引き受ける形で、デフレ対策と同時進行させるべき」というような提言も出始めている。
しかし、わが国財政はすでに危機的な状況下にある。阪神淡路大震災が発生した際、公的債務の対GDPは82%に過ぎなかったが、2010年度には180%にも達している。つまり、これまでの日本や先進諸国と比べて、フロー、ストックとも、財政状況が圧倒的に悪い中での対策になる。
一つ対応をあやまれば、震災直後から円高を仕掛けた、金もうけのみを考えるヘッジファンドという禿鷹に、日本国債売り・金利急騰の絶好の材料を提供することになる。彼らの材料にされる安易な財政処理は、極めて危険である。