せいろと粗挽き、変わり蕎麦を組み合わせた
2色蕎麦、3色蕎麦は贅沢なもてなしになる

 変わり蕎麦は季節で蕎麦に散りばめる食材を選んで打ち分けるが、この時はしそ切りが供された。紫蘇が白い肌に飛び散り、箸でつまむと、紫蘇の香りがその場に漂う。

 最初はその香りを楽しむために、蕎麦だけで頂く。次に山葵をちょんと付けて、口に含んでみる。そして、仕舞いにはつゆに蕎麦尻を漬けて食べる。ふくよかな香り、美しい色合い、変わり蕎麦は季節の移ろいの風雅を映しだしてくれる。

西八王子「坐忘」――潜り戸の先に広がる別世界。都会の喧噪を忘れ、極上の蕎麦と懐石に酔いしれるせいろと変わり蕎麦の2色蕎麦。この日は、しそ切りが出された。せいろとしそ切りを同時に2つ味わえる。交互に箸に取って、せいろの食感と紫蘇の風味を味わっていく。変わり蕎麦は香りを「聞く」ものだから、つゆにはほんのちょんと漬けるのがよい。

 蕎麦好きの人を招くなら、せいろと粗挽き、変わり蕎麦を組み合わせた2色、3色蕎麦のもてなしがいいだろう。それぞれの味わい、食感の違いを同時に味わえる贅沢なものになる。

「兄弟で同じ仕事をする難しさの連続でした」

 久信さんがふと漏らす。兄弟だから妥協はできないのだという。上下関係がないから、どんな細かなことでも納得できるまで話合わなければ、お互いに前進はできない。

「でも、それがいい結果を生んできた。自分たちが妥協しなかったから、お客によいものを出せるのだという自信がいつもありました」(久信さん)。

 今は久信さんの息子さんの達也さんが厨房に入って、「坐忘」の2代目の修業に入っている。二人が願望した“100年蕎麦屋”に向かって走っている。

 料理も蕎麦も格上を味わいたい。それは、「坐坊」の玄関の潜り戸を通り抜けた時にかなえられることになる。

「坐忘」
●営業案内
西八王子「坐忘」――潜り戸の先に広がる別世界。都会の喧噪を忘れ、極上の蕎麦と懐石に酔いしれる
・住所 東京都八王子市千人町3-14-11
・電話 042-661-2945 FAX 042-661-2945
・営業時間 11:00~15:00 17:00~21:00(最終入店20:00) 土・日・祝は17:30~) 定休・水曜
・駐車場(5台)あり
●予算:3000~5000円
●HPこちら
●おすすめ:まずは粗挽き蕎麦(950円)を味わいたい。2色蕎麦(1100円)と3色蕎麦(1550円)は蕎麦好きにおすすめ。2人以上なら昼コース(2625円)、夜コース(3830円)はお得感がある。
●酒・料理:酒店オリジナル(「おんなのひとりごと」「時代を超えて」など)のほか全国の銘酒がある。夜は料理も多種多様、前菜3品(950円)、鴨吸い(1050円)、蕎麦掻き(粗挽き)(1260円)のオーダーで立派なコースに。
●訪問:ゆったりとしたお座敷で寛げるから大切な人の接待にはうってつけ。4人、6人、8人と人数が多くてもコース料理で盛り上がる。
●地図こちら

 

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西八王子「坐忘」――潜り戸の先に広がる別世界。都会の喧噪を忘れ、極上の蕎麦と懐石に酔いしれる

脱サラしてわずか1年で、蕎麦激戦区の神田で人気店をつくりあげた著者が教える「ワンランク上の蕎麦屋の始め方」。著者が築き上げたノウハウに加 え、人気店への徹底取材で、そのこだわりと秘密を徹底解剖。蕎麦屋の開業準備から、極上店へ育て上げる秘訣まで、店づくりのすべてを惜しみなく公開。

 

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