世界の中で、飛び抜けて自尊心が低い日本人

しかしここに、一つ大きな問題があります。それは、日本人があたりまえのようにしてきた教育では、自信が育ちにくいのです。

財団法人日本青少年研究所が、日本、韓国、中国、アメリカの高校生を対象に行なった意識調査があります。これは、「私は価値のある人間である」という質問に「YES」と答えた割合を調べるもので、結果は日本7.5%、韓国20.2%、中国42.2%、米国57.2%でした。 日本人は謙遜しますから多少色をつける必要がありますが、それにしても「自分は価値がある」と答えた高校生がたった7.5%というのは低すぎます。

裏返せば、「自分に価値がない」と感じている高校生が92.5%もいるということです。日本の子どもは、アジアの中でも飛び抜けて「自尊感情が低すぎる」のです。

自尊感情とは「自分に良い印象を持っている」「自分が好きである」という自分に対する「ほどよい肯定感」です。良いところだけでなく、悪いところも含めて、あるがままの自分を肯定できている状態です。自尊感情が低い人は、過去の失敗や不快な経験をよく記憶しています。

そして、失敗を繰り返すことを過剰に恐れるため、新しい挑戦ができなくなります。

子ども時代に自尊感情が育たないと、消極的な態度が形成され、将来の夢が描きにくい、人生の幸福感が低い人間になってしまうのです。

「人に迷惑をかけない教育」が子どもの自信を奪う

このように子どもの自信を奪ってしまっているのが、「人に迷惑をかけない子育て」や「過干渉」だと私は考えています。

たとえばデパートなどで、「さわっちゃダメ!」「そっち行っちゃダメ!」と子どもの後を追いかけている母親がいます。子どもからすれば、デパートには見たこともない魅力的なモノが溢れています。そんなモノを見ればさわってみたくなるのが人の常です。

でも母親は「お店に迷惑をかけないように」「周囲のじゃまにならないように」と子どもの行動を監視します。さわっちゃダメ、そっちはダメ、あっちもダメ、走っちゃダメ、と「ダメ出し」をされ続ければ、自己肯定感は育っていきません。

また、「早くしなさい!」「グズグズしないで!」「ちゃんとしなさい!」と、子どもを必要以上にせきたてる行為や、親が何でも決めて、子どもに与えてしまうことで、子どもの自主性を奪います。

子どもの自尊感情を育てるには、良い面も悪い面も含めて、あるがままの子どもを受け入れなければいけないのです。

親が焦ると、子どもに自信は身につきません。反対に、親が寛大な態度でいると、子どもは気楽になり、それまでできなかったことがウソのようにうまくできるようになります。

では、具体的にどのように自信を育てていくのか?
次回からより実践的に見ていきましょう。

(この原稿は書籍『世界標準の子育て』から一部を抜粋・加筆して掲載しています)