この20年で時代は大きく変わったが、今後20年の変化は、その比ではない。思いもよらない変化が次々と起きるこれからの社会では、「たくましさ」、「地頭のよさ」、「社交性」が常に求められるのだ。「世界標準の子育て」では、4000名のグローバル人材を輩出してきた著者が、世界中の子育ての事例や理論をもとに「未来の子育てのスタンダード」を紹介していく。

社交性は、勝手に身につくものではない

これからの子育てに必要な条件は、3つ。「自信」「考える力」「コミュニケーション力」です。

今回は、3つ目の「コミュニケーション力」について見ていきましょう。

これまで日本の子育てで、「コミュニケーション力」が意識されることはほとんどありませんでした。わざわざ子どもにコミュニケーションの仕方を教えなくても、日本人同士であれば言葉や価値観を共有できてあたりまえだと思われていたからです。

しかし、この数十年で日本もすっかり変わり、外国人の観光客や労働者も増えてきました。

日本人同士であっても、育ってきた地域や文化、世代や性別によって違った価値観があってもいいではないか、もっと多様な生き方を認める社会を実現すべきだ、という流れが出てきています。

どんな仕事をしていても、どんな地域に住んでいたとしても関係ありません。時が経つにつれて、多様な文化や考え方が生まれ続けていくでしょう。

その中では、コミュニケーション力がなければ、意思疎通ができない、人間関係をつくれない、仕事がスムーズにいかないなど、多くの障害が生まれてきます。

人生の選択肢を広げていくには、いつ・どんな環境になっても、周囲の人たちと信頼関係をつくるためのコミュニケーション力が不可欠です。

笑顔が一番多い国民は、ブラジル人…なぜ?

とはいえ、一つひとつのアクションは単純なもの。親が子どもの手本となって教えればいいのです。

たとえば、「相手の目を見て笑顔であいさつする」。

世界では、笑顔は「自分は危ない人ではありません」というアピールであり、コミュニケーションの基本です。笑顔であいさつができない人はコミュニケーションの輪に入れてもらえません。輪に入れなければ、人間関係がつくれません。

笑顔一つできるかできないかで、人間関係、子どもの場合には人格形成にも大きな影響が出てくるのです。

この傾向はさまざまな文化・民族が入り混じる国ほど顕著になります。

ソーシャルメディアにアップされた1億5000万枚の写真を分析した結果、笑顔が一番多い国民は「ブラジル人」でした。ブラジルは、多文化・多民族が集まるグローバル化の最前線をいく国です(*なお、この調査で日本人は最下位でした)。

そのほか、相手の目を見て話をする、自分の考えを正確に伝える、人の話を最後まで聞くなど、そうした人付き合いのルールを教えるのは親の役割です。

北欧から考える「父親」と「母親」の役割

親が子どもの手本となるには、父親と母親の協力体制が欠かせません。

北欧は「世界一子育てがうまくいっている地域」と言われますが、その理由としてはよく「手厚い政府の子育て支援」があげられます。

しかし、実はそうではありません。一番の要因は、「父親の育児参加」です。

個人主義が浸透している北欧では「夫婦共働きがあたりまえ」です。

男性が家事をするのもあたりまえで、女性が働くのもあたりまえ。そのために育児も夫婦二人でしようという文化が根づいています。

父親が子育てに参加することで母親の育児負担が減り、ストレスが減り、結果として「子育てしやすい国」になっているわけです。

実際、育児休暇を取る父親の割合は、スウェーデンでは80%と驚異の数字を誇ります。一方、日本はたったの2%。育児休暇を取ったら白い目で見られるのが日本の父親で、育児休暇を取らないと白い目で見られるのが北欧の父親、というわけです。