「立地は最悪」でも
なぜ行列ができるのか?

 しかし、「主婦の店・さいち」はそうではない。
 立地は最悪と言っていい。
 偶然にふっと入る通りがかりの人は、おそらく、皆無である。
 ほとんどが、目的買いの、強い衝動を胸に抱いた客であって、過疎地にあって、その吸引力を持っているのは凄まじいことである。
 現に、僕らもあの日、東京から赴いたのだ。

 たとえば、過疎地といかなくとも、メインストリートではない場所でも商売が成り立つようになれば、どうだろうか。

 仙台の繁華街と比べて、おそらく、「さいち」の地代は、10分の1くらいまで抑えられるのではないだろうか。

 つまり、通常かかるはずの「地代」という、ビジネスにとって大きな「固定費」が浮くことになる。浮いた分は、他のマーケティング・コストと同様に、利益となる。

 ようするに、「コンテンツ主義」を突き詰めていくと、「広告」「営業」「PR」などばかりではなく、「地代」までも大幅に縮減することができるようになり、大きな利益を担保できるようになる。

 大きな利益を担保できるので、「小ざさ」も、そして「さいち」も、驚くほどに低価格で商品を顧客に提供することができるのだろう。
 そのことがまた、顧客満足度とブランド価値の上昇につながることを、この「コンテンツ主義」を貫き通す、極めて日本的なマーケティング戦略を実行している人たちは、よく知っているのだろうと思う。