おはぎに隠れた陰のヒットメーカーを発見!
店内に入って、気づいたのは、惣菜のコーナーがありえないほどに大きく、充実していたことだ。
もっとも、一日平均5000個のおはぎをさばくには、相応の売り場も必要だが、それ以上に、ほかの惣菜の充実ぶりが凄まじいほどだった。
当然のように、多くの客はおはぎを買う。
しかも、様々な種類のおはぎがあるので、一人、何個も買う。ただし、賞味期限が1日しかないおはぎを、溜め込んで買うことは不可能だ。
そうなると、客の多くは、豊富に取り揃えられた惣菜のほうに向かい、これでもかというくらいに、買い物かごに詰め込んで行くのだ。
おはぎだけでなく、この惣菜こそが、「主婦の店・さいち」のビジネスのポイントだという。6億円ともそれ以上ともいわれる年商の実に半分くらいを、惣菜の売上が占めているという。
僕らは結局、おはぎだけではなく、大量の惣菜も買い込んで食べたのであるが、おはぎは当然のことながら、惣菜が実にうまいのだ。
もしかして、おはぎではなく、弁当などの他の惣菜を目当てに来店する人も多いのではないかと思った。
そして、遠くから来る人ほど、買い込む量が多くなり、客単価が上がる。
「主婦の店・さいち」で起きていることは、常識的なマーケティングでは考えられないことだ。なぜなら、商売をするのなら、立地というものが重要であると必ず説かれるからだ。
かの吉祥寺「小ざさ」も、店舗の面積はたしかに1坪と小さいながら、起業した稲垣篤子氏の父・伊神照男氏は、出店の場所を吟味に吟味した。
「人が渦巻くような場所」を選び、そこで人が商売しているのを知るや、法外な値段を提示して商売する権利を獲得し、しかも、その人のその後の人生の面倒まで見ている。
おそらく、それほどまでに、吉祥寺「小ざさ」にとって、立地は重要だったのだろう。
それもそうである。
行列は、人の目につくほど効果が高い。人は、行列の先が気になり、行列に並んでみたくなる。それだから、行列自体が、「広告」以上の効果をもたらす。