ギブ&ギブで
見返りを求めない
川北:こちらは損得考えないでやったことほど、相手が覚えているというのはよくありますよね。僕は前にこういうことを言われたことがあるんだけど。「私は新入社員で新聞社にはじめて入ったのですが、右も左もわからなくてドキドキしていたら、川北さんが映画の試写券をくれて、お前どうせ遊んでるんだから映画でも行ってこいって言ってくれたんです。あれ、なんかすごく心がほっとしてうれしかったんですよ」と。そんなことは、僕はぜんぜん覚えていないけどね。言われた本人はずっと覚えていたみたいなんだよね。
大塚:何でもないことでも、言われた人が心に響いたら、一生それを恩に感じるんですね。
川北:そうそう。その彼はその後いろいろと僕のためにやってくれてね、「なんでお前こんなによくやってくれるの?」と言ったら、実は昔こんなことがありましたと言われてね。そこではじめて、自分が何気なくやったことの意味に気づいたんですよ。
大塚:その人には響いてたんでしょうね。計算ずくでやったり、見返りを求めるギブ&テイクではないんですよね。
川北:そう。ギブ&テイクじゃなくて、自分の立場でできることは何でもしてあげるギブ&ギブが一番いい。これだけしてあげたんだから何かしてくれ、なんてさもしい根性があると、間違いなく相手は返してくれないですね。
大塚:そういうものですよね。私が1万人インタビューを通して気づいたことにも、そのような、いざというときに周りが助けてくれず、もっと利害を超えた人付き合いをしておけばよかったと後悔する人が多いことでした。先の独立のお話もそうですし、仕事でピンチに陥ったときにも、実際に手を差し伸べてくれる人がいかに少ないかというのが現実です。お互いが信頼できる人間関係は短期間ではつくれないですし、ギブ&テイクの利害でつながった関係は、結局利害がなくなったときに効力を失いますので、相手を本気で思いやる「利他の精神」こそが、最後は自分を助けるということなんですね。
今日は、川北さんならではの世代観をお聞かせいただき、ありがとうございました。(談)(2011年10月14日収録)
12万部のベストセラーとなった『40代を後悔しない50のリスト』に続く[30代編]として、大塚寿さんの新刊『30代を後悔しない50のリスト』が発売されました。前作同様、1万人のインタビューを通してわかった等身大でリアルな50個の後悔から、明日を確かに生きるヒントが見つかります。人生の土台となる30代。格差の生まれるこの10年をいかに過ごすべきかを、本書から学んでみてください。
『30代を後悔しない50のリスト―1万人の失敗談からわかった人生の法則』
大塚寿[著] 定価1500円(税込)
ダイヤモンド社
四六判・248ページ
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【特別対談の日程】
●第1回:「藤原和博×大塚寿」(前編)
●第2回:「藤原和博×大塚寿」(後編)
●第3回:「川北義則×大塚寿」(前編)
●第4回:「川北義則×大塚寿」(後編)
●第5回:「桑野克己×大塚寿」(前編)(11/7)
●第6回:「桑野克己×大塚寿」(後編)(11/8)
●第7回:「渡辺佳恵×大塚寿」(前編)(11/10)
●第8回:「渡辺佳恵×大塚寿」(後編)(11/11)