やり直しのきく独立、きかない独立
能力より人間関係がものを言う

大塚:私も川北さんも、会社員からキャリアチェンジして独立を選んでいます。私は32歳で創業したのですが、川北さんは何歳くらいで独立されたのでしょうか?

川北:一本立ちしたのは、40代前半のときかな。もう限界の年齢でしたね。独立するには、それ以降は無理だと思います。

大塚:守るものが多くなりすぎて……。

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川北:いや、やり直しがきかないんですよ。50代で独立したら、失敗したとき二度とやり直しがきかない。僕は、何人も脱サラして独立した人を知っていますけれど、だいたい周りは無理だ、やめておけって言うんですよ。だけどね、ほとんどの人が自信過剰になっているというか、自分では経営できると信じていますからね。それで結局、借金を1億円とか背負うんですよね。最初にいろいろな金融機関からお金を借りて、それでダメな場合は自分の自宅を担保に入れてどんどん借金を増やしていくと、最終的には1億円くらいになっていくんですよ。

大塚:それ、わかります。私も一時、借金が1億を超えていた時期がありましたが、それはそれはスリリングなものがありました、金利もすごいですからね。でも私の場合は、30代でしたから、仮に失敗しても確かにやり直しがききました。

川北:50代で1億円じゃパンクするでしょ。パンクしたときには、自己破産もしなきゃならない。自分の会社のパンクだけじゃなくて、自己破産もしなきゃならなくなる。会社がパンクして自己破産すると、もう本当に一家離散ですよ。そういう人を、僕はこれまで何人も見ていますからね。私はやめろって言うんだけど、無理ですよね。自分にはできると信じ込んでしまっている。

 独立できるかできないかというのは、その人の能力以上に人間関係なんですよ。いかに人間関係が深く広いかどうかということ。いろいろな人間関係を持ってないと、やはり独立しても失敗しますよ。自分の腕だけを過信すると、結局はうまくいかないことが多いですね。

大塚:そうですね。独立というのは本人の力だけじゃなくて、助けてくれる方がどれだけいるかに左右されますね。『40代を後悔しない50のリスト』でも、本当に困ったときに助けてくれる人の存在について書きましたが、いかに周りに助けてくれる人が少ないかを後悔している人が多いということですね。

川北:そうそう。やっぱりね、貸しを作るというのとは少し違うけど、自分がいかに周りの人にギブできたかですね。相手のことを本気で考えてギブできたかで、自分が苦しいときに助けてくれるかどうかも決まりますよ。あとは、「川北さんに何かあったら、僕は絶対助けますから」なんていう人間は全部ダメですね。そういう人はいざというときには絶対に協力してくれない。人間関係っておもしろいですよ。

大塚:そうみたいですね。組織にいるときにはちやほやしてくれていた人が、独立した途端にさーっと引くって言いますよね。利害関係で結ばれた人間関係は、その関係がなくなるととたんに消えてしまいますが、利害を超えてつながっている人は、本当に困ったときに助けてくれますよね。