セレッソとファイターズで異なる地域密着の形

「地域密着」とひと言で言っても、対象となる土地やチームの性質によって、そのやり方も変わってくる。そういう意味では、セレッソ大阪と北海道日本ハムファイターズは全く別種のケースだったと言っていい。

 セレッソでは、大阪という場所の特異性がまずテーマとなった。他府県の方々は「大阪人」というと特定の典型的なイメージを抱かれるようだが、実は府民のカラーは地域によって大きく違う。大阪市内、河内、泉州、北摂、それぞれに別の持ち味があり、さらにその中でも街ごと、区域ごとに微妙な違いがある。その中で「大阪府」全体のメンタリティをつかむのは至難だった。

 大阪南部、それも東住吉を中心とする狭い範囲だけにターゲットを絞ったのはそのためだ。北部にガンバ大阪という人気チームがあったからでもあるが、それ以上に、ピンポイントに絞らなければ地域性に応じたアピールができなかった。そこで、「自転車で20分以内」の範囲を重点的に回り、顔なじみを増やしていく手法をとった。

 しかしファイターズの場合、「北海道」という広大な土地が対象である。本拠地は札幌でも、あくまで北海道全体が「ファイターズの町」だ。ファンと接するには、「広域にして密」なコミュニケーションが必要だった。

 もう一つの違いは知名度だ。セレッソが「存在すら知られていない」状態から始まったのに対し、ファイターズは移転そのものが大きなニュースとなった。プロ野球チームがついに北海道にもできた――暖かな歓迎を受けられたのは、そうした北海道の皆さんの喜びがあったからだった。

 とすると、セレッソでの課題が「ゼロから始めて愛着を持ってもらうこと」であったのに対し、ファイターズの場合は「最初の人気をこれからも継続すること」が課題だということになる。これは簡単に見えて、実は難しい。当事者たちが「今の人気」はこれからもあると錯覚し、ともすれば気の緩みが生じるからだ。

 組織の内部を改革しながら、「広域にして密」な地域とのかかわりをいかに実現するか。新たなチャレンジが始まった。