おカネがない創業期に
どうすれば口説けるか

 「ロマン」と「ソロバン」の2つが重要と述べたが、特に創業期はロマンが重要になってくる。この時期には潤沢なおカネがないのだから、「一緒に世界を変えよう」と言い続けるしかない図3)。

「友人と起業」が失敗する理由図3 起業時からの時間の流れと必要なエネルギーのバランス
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 私がシェアーズ社を創業したときは、「世界を変える会社の作り方」という冊子を作って配布していた。起業に至った経緯や想い、ビジョンを赤裸々に綴ったものだ。今見返すと荒削りで恥ずかしい部分もあるが、その冊子に込められたロマンは確かなものだったと思う。何人もこの冊子を見て入社してくれた。その中には、起業から事業売却にいたるまで重要な役割を担う人も多数含まれる。

 スティーブ・ジョブズがペプシコーラ社に勤めていたジョン・スカリーを「このまま一生砂糖水を売り続けたいのか、それとも私と一緒に世界を変えたいのか?」と言って口説いたのは有名なエピソードだ。

 創業期にロマンを伝えるにはいろいろな手段がある。たとえば、今ではGoogle が主催する月面レース「Google Lunar XPRIZE」に挑戦するispace社(東北大学吉田研究室などとの共同事業「HAKUTO」として参加)は、創業当時、毎週のように宇宙関連のイベントを主催していた。そのイベントに参加していた大手広告代理店や外資系コンサルティングファームの人をチームに加えた。こうして強力な組織ができたのである。

 私が過去に事業売却した財務分析ウェブサービスでは、私の本を読んで入社する人が多かった。本ではなく、ブログでもよいかもしれない。魅力的な人材に対面でロマンを語ることも重要だが、イベント、本、ブログ、講演会など、さまざまな機会を活用して語り続けることも大事だ。