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新型コロナウイルスの感染拡大という未曽有の危機において、最も深い傷を負った鉄道会社はどこか。その筆頭に挙げられるのが、西武鉄道を運営する西武ホールディングスと、近畿日本鉄道を傘下に置く近鉄グループホールディングスの2社だろう。連載『エアライン・鉄道の進路』の本稿では、鉄道各社が本業以外の領域に進出していく中、コロナ禍で収益モデルを大きく毀損した2社が導き出した進路の正体と課題に迫る。(ダイヤモンド編集部 宮井貴之)
西武は不動産回転型ビジネスに勝ち筋
赤坂の商業施設を4000億円で売却
「不動産回転型ビジネスに参入し、聖域なく流動化を行う」――。振り返ること2024年5月、西武ホールディングス(HD)が発表した「西武グループ長期戦略2035」では、不動産を保有して賃料を収入源とするのではなく、取得した不動産の価値を高めて売却するビジネスモデルに転換することを“宣言”した。
背景にあったのは、新型コロナウイルス感染症のまん延による鉄道収益の大幅な減収だ。多くの通勤客が在宅勤務を余儀なくされたことなどにより、鉄道各社の業績は軒並み赤字に転落。その影響を色濃く受けた鉄道会社の筆頭格が、西武鉄道を中核とする西武HDと近畿日本鉄道を擁する近鉄グループホールディングス(HD)の2社である。
まず、西武HDが苦しかったのは、鉄道事業の落ち込みもさることながら、ホテルやレジャー施設といった人流に依存した資産を大量に保有していたことだ。故に、21年3月期の営業損益は、過去最大となる515億円の赤字(前期は568億円の黒字)に陥った。そこで西武HDは冒頭のように、資産回転型のビジネスに転換すると決断したわけだ。
それを象徴するのが、赤坂プリンスホテル跡地に建てた「東京ガーデンテラス紀尾井町」の売却だ。25年2月に米投資ファンドのブラックストーンに約4000億円で譲渡し、その売却益は負債の返済に充てるほか、インバウンド需要を取り込むべく主要なホテルに投資する方針だ。
同社の財務担当役員の古田善也氏はダイヤモンド編集部のインタビューに対し、「売却益のうち500億円を使ってプリンスホテルのブランドを強化していきます。その最初の実践の場として検討しているのが、品川プリンスホテルです」と説明している(詳細は『西武HD、東京ガーデンテラス売却は新ビジネスへの「本気度」示すため!財務トップが4000億円ディールで得た売却益の“使い道”を解説』を参照)。
そして、ビジネスモデルの転換を迫られたのは、近鉄グループHDも同様だ。西武HDと同じくホテルやレジャー、不動産事業を手掛け、路線距離が私鉄として日本一の近畿日本鉄道を傘下に置く近鉄グループHDは、いったい何に活路を見いだしたのか。次ページでは、近鉄グループHD独自の勝ち筋と両社の課題について明らかにする。







