起業は不安をともなうもの。そのため、気心の知れた友人と起業したいと思う人がいます。しかし、3年で8つの事業を創造した山口揚平氏によると、「友人との起業はうまくいかない」と指摘します。今回は、どうすれば共同創業者を口説いて、仲間に引き込めるかを解説します。
第8回、第9回では、「立ち上げ期のチーム」について解説します。
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共同創業者を口説くには
「ロマン」と「ソロバン」が必要
チームメンバー集めで何より重要なのは「口説き続ける」ことだ。ただ単に口説くのではない。口説き続けるのだ。たとえば、DeNAの創業者として有名な南場智子氏は5年かけて口説き続けた。新卒の面接で会ったある社員にショートメッセージを不定期に送りつつ、その人が次のキャリアへ進もうとした段階で熱く口説いたという。口説く相手によってベストな方法は異なると思うが、大事なのは続けることだ。
そして、口説くときには、「ロマン」と「ソロバン」のバランスが重要になる。「ロマン」とは、あなたの企業のビジョンのことだ。「こんな事を成し遂げたい」「世界をこんな風にしたい」といった想いを伝え続ける。第2回、第3回で言語化した「ビジョン」「ミッション」「バリュー」を伝えることで、想いを共有できるかもしれない。
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また、自分の時間、おカネ、労力をどれくらいの事業につぎ込んでいるのか、すなわちあなたがどれくらいコミットしているのかも相手にロマンやパッションを伝える手段になる。ここでのポイントはコミットメントの量ではなく割合である。あなたが投下しているおカネの量が少ないとしても、最大限の金額を投下していれば、あなたのロマンは相手に伝わるものである。
対して「ソロバン」とは、感情面でアピールするロマンとは異なり、論理的な部分だ。「こういった事業計画で進めていて、今はこの段階にいる。これから○○が必要になるので、○○に強いあなたが欲しい」「給料はこれくらいしか出せないが、ストックオプションならこれくらい出せる」「現段階のプロトタイプはこういった状況だ」。あなたの事業に参加するよう論理的に説得するのだ。第4回、第5回で作成した「利益方程式」を1枚の図にして示すことで、相手とのコミュニケーションがスムーズになるかもしれない。
「ロマン」と「ソロバン」の最適なバランスは相手によって変わってくる。相手が何を大切にしているのかを見極めながら、「ロマン」と「ソロバン」の両方から何度もアタックし続ける。熱い想いを伝えながら、一方では客観的に事業を捉えつつ、相手を誘い続けよう。