新興市場のジャスダック証券取引所が、大阪証券取引所の子会社となることが決まった。
ジャスダックの取締役会は6月10日、大証によるTOB(株式公開買い付け)に賛成する方針を決定。これを受けて大証側も、8月にもTOBを実施して子会社化し、システムを統合。傘下のヘラクレスと統合する意向を示した。
ここまでの道のりは平坦ではなかった。ジャスダックの株式の7割を持つ日本証券業協会が、保有株の売却を表明したのは昨夏。ジャスダックが赤字転落したためだ。東京証券取引所のひとり勝ちに対し存在感を示したい大証は、火中の栗を拾う。話は順調に進み、首脳陣のあいだではおおむね合意に達した。
ところが今年に入り、ジャスダックの経営陣がこれに反旗を翻す。8人の取締役のうち5人が、大証にのみ込まれることを懸念して反対を表明、事態がこじれた。そこで動いたのが野村證券の古賀信行会長だといわれる。古賀会長と、日証協の会長、ジャスダックの社長は野村證券で同期入社の仲だからだ。反対派の取締役に次のポストを用意したり、説得に当たったりしたと見られる。
その甲斐あってか、取締役会の前に開かれた株主総会で反対派5人がすべて退任。どうにか統合にこぎ着けた。
しかし大証・ジャスダックの今後について、「行く先はきわめて不透明」という指摘が多い。確かに、統合すれば上場企業数は1100社程度になり、その存在感は増す。だがそれは、器が大きくなっただけで、市場の活性化とは別問題だからだ。
そもそもジャスダックが赤字転落した背景には、新興市場の低迷がある。市場の乱立によって上場基準が甘くなり、市場の質が悪化。投資家は離れていった。にもかかわらず、今回、新興市場のあり方などに関する議論は皆無。上場基準の統一に関しても統合後に詰めるとしており、まだなにも決まっていない。
統合効果についてジャスダック側は、他市場より高い手数料を値下げすると強調するが、それとて証券会社は喜んでも投資家にはなんの関係もない。現に、一時は統合相手に名前が挙がった東証も、統合効果を疑問視し見送った。
市場として活性化するためには投資家の呼び込みが必須。規模拡大より前に、投資家の信頼を取り戻すことが必要なのではないか。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 田島靖久)