第5回目は英語を使ってコミュニケーションするときの極意について、外資系トップの言葉を紹介する。グローバルのコミュニケーションは日本とはまったく違うと体験を語って頂いたのは、日本クラフトフーズの井上ゆかり氏である。

 英語は、スキルよりもウィル。うまくしゃべれるか、よりも、何をしゃべるか。そんなメッセージが取材で次々に発せられることになった『外資系トップの英語力』。

 では実際に、どのようにしてトップたちは英語を使っているのか。英語力から一歩踏み込んだ、グローバルコミュニケーションについて問うてみると、これが単純なものではないとわかった。
  ただ、英語ができるというだけでは、グローバルなビジネスや外国人のマネジメントはできない。モチベーションアップや、人を動かすことはできない、というのである。

 それを実際にアメリカで体験することになった、と語るのが、日本クラフトフーズの井上ゆかり氏だ。経営トップを務めていた『クロレッツ』『リカルデント』『ストライド』などガムやキャンディを展開するキャドバリー・ジャパンが、世界最大規模の食品・飲料メーカー、クラフトフーズの一員となり、現在は日本クラフトフーズの経営トップを務めている。外資の世界でも稀少な女性経営者だ。

日本クラフトフーズ株式会社 代表取締役社長 井上ゆかり氏

 1985年に大学を卒業、P&Gに入社。日本の文化で育ち、日本の教育を受けた日本人を採用するプログラムの二期生として、マーケティング部門で採用された。

「私は男女雇用機会均等法施行の一年前に大学を出ているんです。金融のゼミで学んで、国内銀行に行こうとしていた私に、外資に行きなさいとアドバイスをくださったのは、お世話になった教授でした。日本の会社の下積みは長い、君の性格からすればそれは我慢ならない、外資なら性別も関係がない、と」