ギリシャ、イタリアからフランスまで
信用不安を飛び火させる政治機能の低下

 世界的に政治の機能低下が顕著になっている。たとえば、ユーロ圏の信用不安問題が拡大している背景には、政治の力が弱くなっていることがある。

 信用不安問題の発端となったギリシャでは、ユーロ加盟と同時に低金利で国債を発行できる“身の丈”以上の信用力が付いたという幻想に取りつかれ、同国政府が債務額をごまかして多額の国債を発行し、それによって大盤振る舞いをしてしまった。

 それが、リーマンショック以降の景気低迷で顕在化し、同国の実質的な財政破綻へと繋がることになった。

 2010年5月、ギリシャが事実上の財政破綻に追い込まれた後、同国政府は自国で問題の解決策を見出すことができず、EUやIMF、ユーロ会議などに頼らざるを得なかった。そして、10月26日のユーロ会議で解決策が示されると、今度はパパンドレウ首相が、こつ然と国民党投票実施の発言を行ない、世界の金融市場を震撼させた。

 次いで、問題が飛び火したのはイタリアだ。イタリアの経済規模は大きく、国民の同意を得て、徐々に財政削減を実施することができれば、同国の国債の信用力がここまで落ち込むことはなかっただろう。

 しかし、ベルルスコーニ前首相の政権運営能力には、かなり以前から疑問符を付ける向きが多く、実際、今回の信用不安問題に対してほとんど有効な政策を打つことができなかった。

 その結果、同氏は辞任し、後任の経済学者であるモンティ氏にバトンタッチされたが、今のところ信用不安の火の勢いは低下していない。

 それどころか、信用不安の波は、フランスやドイツ、オランダなどの中核国にまで広がる懸念が高まっている。そして、大西洋を渡った米国でも、赤字削減案に関する与野党間の協議が決裂した。

 こうした世界的な政治機能の低下を見ていると、今後、リーマンショックの再発、さらには1930年代のように大恐慌発生の懸念が高まっていると考えた方がよいだろう。