地銀再編サバイバル 売れ残り回避の最終戦#27Photo by Yasuo Katatae

2025年以降、県境を越えた地銀再編が相次いでいる。だが、規模を拡大しても収益力が高まるとは限らない。そこでダイヤモンド編集部は、2行以上の銀行を傘下に持つ上場地銀グループを対象に、ROE(自己資本利益率)やPBR(株価純資産倍率)、経費率を基にランキングを作成。長期連載『金融インサイド』内の特集『地銀再編サバイバル 売れ残り回避の最終戦』#27では、ワースト上位に共通する「成果を生みにくい統合形態」と、みずほフィナンシャルグループの統合の迷走ぶりを基に、今後の大型地銀再編が“足し算統合”に終わらないための条件を探る。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)

地銀再編ラッシュに潜む難題
「足し算統合」を超えられるか

 2025年以降、地方銀行の再編が加速している。金利上昇で収益機会が広がる一方、人口減少による市場縮小や、サイバーセキュリティー、デジタル分野への投資負担は重い。単独行では必要なリソースを確保しにくくなり、経営規模が競争力を左右する局面に入った。

 25年4月には群馬銀行と第四北越フィナンシャルグループ(FG)、26年3月にはしずおかFGと名古屋銀行、同年5月にはあいちFGと三十三FGが、相次いで経営統合に向けた基本合意を結んだ。再編は県内同士の合併から、県境を越えた有力地銀同士の陣取り合戦へと広がっている。

 ただし、地銀トップの胸中には共通の悩みがある。統合によって、果たして「1+1=2」を超える価値を生み出せるのか、という問題だ。

 経営統合に慎重な山梨中央銀行の古屋賀章頭取は、「県境をまたいで統合した例は幾つかあるが、『1+1が3になる』ような相乗効果を生んだのかといえば、私が知らないだけかもしれないが、あまりそう見えない」と話す(詳細は『山梨中央銀行頭取が「経営統合は選択肢にない」と断言!“1県1行”の地銀が選んだ信金・信組との共存戦略』を参照)。

 名古屋銀行との大型越境統合に踏み切った、しずおかFGの柴田久社長も「私はずっと『1+1=2にしかならない経営統合ならやらない』と言っていた」と明かす。統合の当事者でさえ、規模を足し合わせただけの“足し算統合”に終わらないかどうかを慎重に見極めていたのだ(詳細は『しずおかFG・柴田社長が明かす「名古屋銀行統合」の狙いと決め手、「1+1=2」の単なる“足し算統合”で終わらない条件とは』を参照)。

 地銀再編を外から動かす投資ファンド、ありあけキャピタルの田中克典代表は「何となく規模だけを大きくしても、1+1=2になるだけでは意味がない。統合による規模拡大は、経費率を下げ、投資余力を高め、資本効率を向上させて、企業価値向上につながって初めて意味を持つ」と指摘する(詳細は『地銀「総資産20兆円」提唱のありあけキャピタル田中代表を直撃!再編のキーマンが次の合従連衡パターン&経営統合の勝ち筋を激白』を参照)。

 立場の異なる3者が同じ論点を口にするのは、統合後も業績が振るわず、再編が行き詰まった先例が念頭にあるからだろう。

 規模拡大だけで恩恵を得られるなら、どの地銀であれ、明日にでも統合へ踏み切るだろう。そうならないところに、地銀再編の難しさがある。

 特に統合の成否が問われるのが、合併せずに持ち株会社の下に複数の銀行を残す、近年主流の再編形態だ。

 そこでダイヤモンド編集部は、2行以上の地銀を傘下に持つ上場地銀グループを対象に、「経営統合後の業績が振るわない地銀ランキング」を作成した。最新決算のROE(自己資本利益率)や経費率に加え、統合初年度からの各指標の改善度も掲載している。

 次ページでその結果を公開し、地銀の事例だけでなく、みずほFGの統合がつまずいた経緯を「週刊ダイヤモンド」1999年9月4日号までさかのぼって検証し、今後の地銀再編の成否を分ける条件を探る。