東芝とWD、サムスンに対抗しての和解・提携で残る「溝」東芝メモリの四日市工場では増産工事が急ピッチで進められている。米ウエスタンデジタル(WD)と設備を共同投資して運営しているが、その提携関係は複雑だ Photo by Reiji Murai

半導体子会社、東芝メモリの売却をめぐって対立してきた東芝と米ウエスタンデジタル(WD)が和解した。両者は、フラッシュメモリー事業で先行する韓国サムスン電子に対抗するために提携関係を取り戻さなければならないが、対立を通じて提携の弱さがあぶり出された。(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 村井令二)

 東芝メモリの売却をめぐる和解交渉が間近に迫った8日、東芝の社長、会長を務めた大物経営者が死去した。2015年に発覚した会計不祥事の責任を取って相談役を辞任していた西田厚聰氏。急性心筋梗塞が死因で、73歳だった。

 05年に社長に就任した西田氏が「剛腕」として名をはせたのは、06年の米原発メーカー、ウエスチングハウス(WH)の買収が大きいが、同時に西田氏が強化したのが、半導体のフラッシュメモリー事業だった。

 西田氏は08年2月、三重県四日市市と岩手県北上市の2カ所同時に半導体メモリーの新工場を建設する巨額投資を決断した。

 この2カ所同時建設は、直後に発生したリーマンショックで一時頓挫したが、このときに投資を決定した四日市工場の第5棟は現在の先端拠点だ。北上市の新工場も東芝は今年9月にあらためて建設を決定しており、当時の延長線上に今の半導体メモリー事業の活況がある。