むろん、「そのようなイノベーションを引き起こすプレーヤーがいれば」の話ではあるが、実は「アマゾンがそろそろそこに入ってくる」ことが予想されるのだ。

 アメリカでは、アマゾンプライム会員向けに無料で提供されているプライムビデオの人気が高まっている。これは一般には「動画配信サービス」と考えられているが、独自のドラマやバラエティ番組の製作も行っているという観点で見れば、実質的には「グローバルな多チャンネルテレビ」であるという見方のほうが的を射ている。

 日本で視聴できるスマホ向けの動画配信サービス(アマゾンを含め、多くの場合はテレビでの視聴もできる)には、他にもHulu、Netflix、AbemaTVなど様々なプレーヤーがいるが、話をわかりやすくするために、仮にアマゾンのプライムビデオが日本で天下をとった場合のことを考えよう。

「テレビをつけても見るのはスマホ」
民放はアマゾンにとって代わられる

 もしやろうとすればの話であるが、プライムビデオはいずれ地上波と同じ規模でテレビCMを流せるようになってくる。ビジネスモデルとしてそうするかどうかはまた別の話だが、それだけメディアとしての影響力が出てくるということだ。

 しかもその場合、アマゾンはCMを流す人を選ぶことができる。「この車に乗っている人は、このメーカーのこの車のCMを見たほうがいいですよ」とか「このブランドの化粧品を買っている人は、ライフスタイル的にはこのキッチン洗剤の宣伝をご覧いただくといいですよ」など、アマゾンが得意な「おすすめ広告」を配信できるようになるからだ。

 つまり、テレビにいよいよ広告配信が行われる時代が訪れる可能性が出てくるわけだ。そうなると、ここでもパワーシフトが起きる。広告メディアよりも、広告配信エンジンを持っている会社の力のほうが上になるのだ。それは、テレビ局からアマゾンやグーグルに収益が移行するということである。

 構造不況とは、それまでビジネスを成立させていた前提が変わり、どうやっても収益が上がらない構造へと変化することを指す。地上波のテレビ番組を、一般大衆が1日中娯楽として楽しんでいたからこそ成立していた「テレビ局」というビジネスモデルの「栄華の構造」が変わりつつあるのだ。

 皆、テレビはつけていても見ているのはスマホ。人気があるのは一部の番組のみ。そしてスマホで見られる番組の視聴時間が増え始めている。そうしたことによって、テレビ局が収益を上げられる構造はもう崩れてしまっているのである。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)