カップルでの利用を前提に開発されたSNS『Between』。だがその利用シーンは、恋愛だけに留まらない可能性を秘めている。

 SNSと言えば、「大人数で愉しむもの」というイメージがある。だが、様々な立場の人たち――友人や家族、あるいは同僚や上司との不特定多数のコミュニケーションを、負担に感じ始めているユーザーも少なくない。いわゆる「SNS疲れ」という現象である。

 そうしたなか、あえて「ふたりきり」というミニマムな利用に限定したSNSが登場した。韓国のベンチャー企業「VCNC」が立ち上げた「Between」というサービスである。

「Between」の利用方法は、いたってシンプルだ。提供されているアプリをダウンロードし、最後にお互いの携帯番号を入力すれば登録完了となる。メッセージや写真の投稿機能がメインで、もちろんそれらの投稿にはお互いにコメントをつけることができる。プッシュ通知に対応しているので、どちらかが「Between」に投稿したら、すぐに知らせてくれる仕組みだ。

 また、「思い出箱」というカテゴリー分類機能もユニークだ。その名の通り、両者にとって思い出深い写真やメッセージをここに収めておけば、いつでもすぐに、たとえばプロポーズの言葉などを何度も見返すことができる。暗証番号も設定可能なので、2人だけの大切な記憶を第三者に盗み見られる心配もない。

「カップルをターゲットにしたモバイルサービスの市場が空いている」という考えからスタートした「Between」だが、予想は見事に的中したと言える。その証拠に、現在では1日12万件以上ものメッセージの送受信が行なわれ、2万枚近い写真がやりとりされているという。

 特定少人数とのコミュニケーションに特化したSNSは、今後、Facebookなどの大規模SNSの対極に位置するサービスとして定着していくかもしれない。Twitterやmixiなどにおいても、アクティブな交流を継続している友人の数は自ずと限定される。一般ユーザーのほとんどは「限られた数名の友人との交流」+「ニュースサイトなどからの情報収集」としてSNSを利用している場合が多いのではないだろうか。

 そう考えると、“本当にコミュニケーションを取りたい相手”と“それ以外”とのコミュニケーションを使い分けるという選択は、今後加速していくように思える。「Between」は男女の恋愛に特化しているが、ビジネスへの援用も十分に考えられるだろう。あるいは、災害時の連絡手段としても大いに役立ちそうだ。

 男女の“間”だけではなく、「Between」は、様々な人間関係の橋渡しをしてくれる可能性を持っている。2012年のSNSの潮流を見極める上でも、重要な試金石の1つと言えそうだ。

(中島 駆/5時から作家塾(R)