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2012年3月から、そごう・西武が新たな商品管理システムを全面稼働させる。
百貨店に限らず、日本の流通業界は古くから、POSシステムを導入してきた。しかし、「緻密な運用をしている百貨店は少ないのでは」と百貨店幹部が打ち明ける。
ある百貨店では商品に番号が振られ管理されていたが、「ほとんど数字の羅列に近かった」(百貨店業界関係者)。その商品が売れたという事実がわかるだけで、そこから、複雑な検索などはできない。
そごう・西武は06年、セブン&アイ・ホールディングス傘下に入って、「百貨店の商品管理がいかに甘いかを思い知らされた」という。そこで、10年から西武池袋本店に試験的に新システムを導入。婦人服の40ブランドにつき、「ファーつき」「プリントあり」「色」など50~100の属性を設定することにした。これで、数字が意味のある情報に生まれ変わり、売れ筋分析の精度が上がった。
この属性は他のブランドの商品に当てはめて発注することも可能だ。たとえば、アパレルA社のコートが店舗で完売し、A社にも在庫がなくなってしまった場合、そのコートの50の属性に当てはまるB社のコートを発注すれば、ある程度の代替が可能だ。
さらに、スピードも大きな武器となった。従来なら、土曜日と日曜日の売れ筋を各店の担当者が売り場に聞き取り調査をして、月曜日の夕方までに次の商品を発注していた。しかし、このシステムを利用すれば、最短で日曜日の夜、遅くても月曜日の朝には土日の売り上げ傾向を反映した発注ができる。どの百貨店も土日のトレンドを見て月曜日には発注するから、この時間差は大きい。
別の大手百貨店の店長は「うちも属性入力はできるが、担当者の任意になっている。だから属性から他の商品を逆検索することはできない」と明かす。他の百貨店は「属性は入力可能だが、運用上入力はしていない」(関係者)。
そごう・西武では「今季はこのシステムのおかげで婦人衣料が伸び、なかでもコートが好調だった」。そこで、3月から対象とするブランドを婦人服では40から120に拡大、紳士服も100以上、さらに家庭用品、食品などにも拡大し、今後、基本的には全店、全商品で利用できるようにするという。属性は一つの商品に対して1500まで設定可能だ。
このシステムの構築には数十億円かかったという。それでも、「効果が大きいので、コストは十分に回収できると考えている」(そごう・西武幹部)。
そごう・西武全体の10年度の売上高は前年度比99.2%だったが、池袋本店では、新システムが貢献してか104%と好調だった。全面導入となれば、他社にとっては脅威となるかもしれない。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 清水量介)