5.ドル安政策の始まり

 共和党出身で、しかも金融界出身のムニューシン財務大臣が「ドル安が望ましい」と発言している。これは異例中の異例の事態である。

 通常なら、慢性的な赤字国である米国に資金を集めるために、「ドル高」政策を訴える。それは共和党の基本政策でもあり、また財務長官が金融界出身の時は出身母体を慮り、当然、ドル高政策を実施してきた。

 状況を勘案するなら、それほどまでに輸出を伸ばしたいという事であろうか。オバマも就任当初はドル安政策を導入していた。いずれにせよ、11月の中間選挙に向けて、経済政策の強化が始まっている。

 さらに現在、米国の中央銀行FRBは2年前から金利の引き上げを開始し、より強力に推し進めようとしている。本連載でもご説明したが、中央銀行の本当の仕事は金利の引き上げだ。経済・景気は“波”であり、良いときもあれば悪いときもある。その悪いときに金利を下げる余地を作ることが本当に大事なのである(この部分を理解していない日本人は極めて多い。日銀は選挙が始まるまでに金利を上げておかなければならないのだ)。

 そのFRBの金利の引き上げによる、通貨危機等の動きを防止するために、財務長官自らドル安政策を誘導しようとしているという事も十分考えられる。

6.日本にとっての米国の原油政策

 日本にとってはどうか。原油輸入量の増加・輸入先の多様量化、そして石油価格の上昇は、インフレを待ち望む当局にとっては望ましいと考えるべきかもしれない。しかし筆者は、景気回復なしの物価上昇は望ましくないと考えている。まさに、ミニ石油ショックであり、教科書的にいうと“悪い物価上昇(インフレ)”である。この辺が、財政赤字の恐怖とともに、当局と国民感覚とでは乖離があるといえる。

(博士[経済学] 宿輪純一)