「一時払い終身保険」が、なぜ貯蓄代わりになるのか

 では、なぜこの保険が貯蓄替わりにされているのでしょうか。それは「解約返戻金(かいやくへんれいきん)」といって、解約したときにお金が戻ってくる保険だからです。

「一時払い終身保険」は、保険料を最初にまとめて「一時払い」してしまい、そのまま10年間ほど寝かせて解約すると、その時戻ってくる解約返戻金が少しは増えているので「貯蓄のように増えますよ」と提案されるのです。そして、その金額が、低金利の今は一見すると魅力的な商品に見えてしまうのですね。

 ある保険会社の銀行窓販専用の一時払い終身保険のケースを見てみましょう。(※保険料その他は、保険会社や商品によって少しずつ異なります。)

 60歳男性の場合は、保険料1000万円を一時払いすると死亡時に受け取れる死亡保険金額1273万円になります。

 銀行では次のような説明を受けます。実は、私も銀行で勧められて、数字は違いますが、まったく同じような説明を受けました。

「契約後9年までは、解約すると元本割れをしますが、9年経過すると解約返戻金はプラスになります。10年で解約すると1000万円が1052万円となり、利回り(複利)は0.5%。弊行の10年満期定期預金の金利は0.25%ですから、かなりおトクです。解約時期を後に延ばすと、解約金は年々増えていきます」

 これは保障を提供する商品の説明ではなく、貯蓄商品のものですね。ここで「10年待てば元本より増えるのだからいいのでは」と思った人は要注意。

貯蓄としてみるならば、9年間は元本割れをするのです。

 冷静に考えてみましょう。

 9年間も使えなくなる商品を預金金利と比較しながら貯蓄商品として説明をするのは、いかがなものかと思います。そもそも低い預貯金金利をつけているのは銀行なのに、ちょっとヘンですよね?

10年間預けるなら、保険を買わなくても
元本割れしない安全な商品もある!

 10年後の解約返戻金の利回りも、大手銀行の預金金利と比較すると「よく見える」のですが、実はそれほど有利とはいえません。インターネット専業銀行の10年定期には0.5%を超えるものもあります。

 例えばソニー銀行の場合、一時払い保険料と同額の1000万円を預けると、金利は0.611%です(2月22日時点の金利)。これは普通の定期預金ですから、途中で解約しても元本割れはすることはありません。

 さらに、10年ものの国債を買えば、金利1%で運用できます。

 ※今月2/27まで売り出されている、新型窓口販売方式による10年利付国債(第320回)の発行条件⇒財務省ホームページ(リンク)

 実は、貯蓄型保険商品の場合、保険会社は契約者から受け取った保険料を国債で運用することが多いのです。だとすると、終身保険を買わずに自分で国債を買ったほうが、運用利回りはアップするわけです。

 保険会社は、保険料を利回り約1%の10年国債で運用します。10年後の解約金は実質利率0.5%。つまり、保険会社が0.5%を抜いているということ。

 さらに契約後、9年間も元本割れをします。なぜかといえば、保険会社も経費がかかりますし、保険を販売してくれた銀行に対して販売手数料を支払わなくてはならないからです。