伝え方を変えるデメリットは一切ない

坪田信貴(つぼた・のぶたか)坪田塾 塾長。これまでに1300人以上の子どもたちを個別指導し、心理学を駆使した学習法により、多くの生徒の偏差値を短期間で急激に上げることで定評がある。「地頭が悪い子などいない。ただ、学習進度が遅れているだけ。なので、遅れた地点からやり直せば、低偏差値の子でも1~2年で有名大学、難関大学への合格は可能となる」という信念のもと、学生の学力の全体的な底上げを目指す

佐々木 ある社長の話なんですが、若いときに上司に「やる気がないなら帰れ!」と叱られたそうなんです。それがすごくショックで、「このままでは自分自身がダメになる」と心を入れ替えたのだとか。そこから頑張って社長まで上り詰めたという経験があるから、遅刻してきた新入社員に対して「奮起してほしい」という気持ちを込めて「やる気がないなら帰れ!」と怒ったのだそう。すると、その新人は本当に帰っちゃった。そして後日、何で帰ってしまったのか聞いてみたら「社長に言われたので帰りました。本当に嫌な社長で、パワハラだと思いました」と。

坪田 苦笑するしかないですね。

佐々木 この場合、「遅刻みたいなつまらないことで評価を落としたらもったいないよ」と言ってあげるのが、今の時代の正解なのだと思います。まず、評価をしているという事実を示したうえで「評価を落としたらもったいない」と伝えれば、そりゃそうだと受け止めやすいし、「自分のことをすごく真剣に考えてくれている。今後も言うことを聞きたい」と思える。でも、伝えたい内容は、実は「やる気がないなら帰れ」と同じなんです。

坪田 本当ですね。

佐々木 伝え方によって与える印象は変わるし、伝えられた側の行動ももちろん変わる。さらに言えば、伝えた人の性格まで変えることができるんです。「嫌な奴」と思われている人は、実は嫌な伝え方をしているだけで、中身はいいことを思っていると思うんです。前述の社長も、「遅刻で評価を落としたらもったいない」ということができたら、その新人も「明日から頑張ろう」と思えるし、しかも社長に対してリスペクトする気持ちを持てる。完全に「Win-Win」が作れると思うんです。

坪田 本当だ。しかもデメリットが一切ない。

佐々木 しかも伝え方は技術なので、誰でも身につけることができる。その事実を、この本で伝えていきたいと思っています。