岩瀬さん 忙しいときほど、こうした進捗報告や、「必ずやりきる」という姿勢を見せることが大事。仕事というのはやればやるほど成長するので、たくさん仕事を頼まれる人が、一番早く成長します。とにかく絶対やる人には、どんどん仕事が回ってきて、ますます成長できるというわけです。
Aさん それは大きいですね。回ってくる仕事の大きさに同期と差がつくのは、なんとしても避けたいところです! でも「やりきる」って、どうすれば普段からできるようになるのでしょうか?
「今度飲みに行きましょう」と
言われたら
(撮影/佐久間ナオヒト)
岩瀬さん こういうこと、ありませんか? よく友達と「今度飲み行きましょう」と話すことがありますよね。これってその場の社交辞令で、それっきり行かないケースがほとんどではないでしょうか。学生時代から「その場を取り繕う」クセがある人は、気をつけたほうがいいですね。
Aさん 思い当たるフシがあるかもしれません(汗)。「今度の飲みに行きましょう」と言われたら、どうリアクションするのが正解なのでしょうか?
岩瀬さん 「今度」と言われたら、すぐにその場でスケジュールを聞いて、アポイントを入れる人もいますよね。これこそが実行力がある人です。口約束ではなく、その場で次のアポイントを入れてしまうのです。もしかしたら3ヵ月とか、半年後かもしれません。忙しい人ほど、先のスケジュールが埋まっていますから。
半年後のアポを入れておけば、たとえば大人気の安くて美味しいお店の予約もとれるかもしれません。そうやってひとつずつ前に進めていく人、具体的に行動に移せる人は、信頼されますよね。
Aさん 信頼ってそんなに大事なことなのですか?
岩瀬 社会人として一番大切な資産は何かと言うと「信頼」です。
入社1年目に限らず、ずっとそうです。社内はもちろんのこと、会社を越えた信頼であったり、業界内、社会全体での信頼につながります。
信頼というのは一対一の人間関係と似ていて、作るのは難しいけれど、壊れるのは至極簡単。これが信頼の恐ろしいところです。
Aさん 信頼が壊れる瞬間って、どういうときなのでしょうか?
岩瀬さん もしAさんがたった一度だけ、大事なミィーティングに遅刻したとします。
Aさん そのあと一切遅刻しなかったとしてもですか?
岩瀬さん 最初の印象って大事ですよね。そこで大遅刻をしてしまった人が、仮にその後一度も遅刻しなかったとしても、「あいつは遅刻するやつ」と言われ続けてしまうこともあります。そうなると、大事な局面でお声がかからなかったりすることもあるかもしれません。
当たり前でしょうと思うかもしれませんが、当たり前のことを当たり前にやるというのが信頼の第一歩なのです。
Aさん この新人はちょっと違うなと思われたいのですが、どうしたらいいですか。
岩瀬さん 例えば会社で新人歓迎の飲み会があり、その部署の人たちは皆遅くまでお酒を飲んでいたとします。こういう日こそ、翌朝、シャキッとした顔を見せて「おはようございます!」と元気よく挨拶する。そうすれば「あ、あの人はオンとオフの切り替えがちゃんとできる人なのだな」と印象はグッと良くなるかもしれません。
Aさん たしかに、眠そうな顔でギリギリに出社して…誰もがしそうなことです。
岩瀬さん 誰もがそうなっているときこそ、誰よりもシャキッとしていれば、それは「ちょっと違うな」となりますよね。ピンチになりそうなときこそ、チャンスもあるのです。
Aさん 新入社員はどういう人が信頼されやすいのでしょうか?
岩瀬さん 応援してもらえる、助けたくなる人材でしょうね。そういう人が、やがて信頼に足る人材になっていくことでしょう。だから入社1年目は、『入社1年目の教科書』で紹介したの50のルールにあるような、何気ないことの積み重ねからはじめてみるといいでしょう。
Aさん その「積み重ね」が1年後に大きな差となって返ってくるのですね!
※次回は、新入社員の関心が高い「仕事のミス」について、みんなが不安や疑問に思っていることを岩瀬さんに質問します。お楽しみに。
(2018年3月20日更新予定)
ライフネット生命保険株式会社 代表取締役社長。
1976年埼玉県生まれ、幼少期を英国で過ごす。1998年、東京大学法学部を卒業後、ボストン コンサルティング グループ等を経て、ハーバード大学経営大学院に留学。同校を日本人では4人目となる上位5%の成績で修了(ベイカー・スカラー)。2006年、副社長としてライフネット生命保険を立ち上げる。2013年6月より現職。
世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2010」選出。
著書は『入社1年目の教科書』『入社1年目の教科書 ワークブック』(ダイヤモンド社)、『ハーバードMBA留学記―資本主義の士官学校にて』(日経BP社)、『生命保険のカラクリ』『がん保険のカラクリ』(文春新書)、『ネットで生保を売ろう!』(文藝春秋)など多数。