「ウチの会社では、ポジティブな職場にしていこうという動きがあるのはいいのですが、『ポジティブ、ポジティブ』と言いすぎるのはあまりにも楽観的すぎて、どうかと思っていたんです……。でも、今の話で、あまりポジティブになりすぎるのもよくないのだと確信しました。B君と対照的に、C君という非常に頼りになる部下がいるんですが、彼はちょっとネガティブ。どうしたらもっとポジティブにさせられるかと頭を悩ませていたのですが、そんな気にする必要はなさそうですね」

 実は、A課長の「どうしたらもっとポジティブにさせられるかと気にする必要はないんですね」という言葉には、ポジティブの弊害に関する重要な真実が含まれている。それについては、徐々に種明かししていくことにしたい。

不安だからこそ
上手くいく

 ポジティブ思考になれば気持ちが前向きになり、モチベーションが高まることは事実である。つまり「やっても、どうせダメだ」と思うよりも、「きっと何とかなる」と思った方が、危機的状況を打開できる可能性は高まるというものだ。ゆえに、私もポジティブ思考のコツを説くことがある。

 だが、ポジティブ思考は万能ではない。ポジティブであることがかえって仇となることもある。

 例えば、大きな受注につながる可能性のあるプレゼンが目前に迫っている時だ。部下に準備状況を尋ねると、余裕の笑顔で「大丈夫です、完璧です」と返答。

 そして前日にプレゼン用の資料をチェックすると不適切な箇所があったため、「修正しておくように」と言うと、「はい、大丈夫です。任せてください」と部下は自信満々に答える。

 ところが当日、上司は本番のプレゼン用の資料を見て、修正箇所が間違っていることに唖然とする。もちろんこちらの指摘を無視したわけではない。部下は一応修正しているものの、きちんと理解していなかったために、内容が間違っている。

「完璧です」「任せてください」などと安易に口にするタイプこそ危ない。深く考えていないからこそ、楽観的になれるのだ。