言われたことがパッとできるようになり、
上司から信頼されるようになった

岩瀬 いじわるな上司だったのですか?

藤沢 いや、僕が入社するまでは、すごくいい人だったんです。オファーを僕が受けるまでは、美味しいフランス料理屋とか寿司屋に連れて行ってくれたり、合コンにも呼んでくれた。で、お前、俺の下で働けばこんな世界だよ、みたいな感じで言ってました。当時、僕はいろいろな研究機関や他の投資銀行からオファーを貰っていたんですけどそれらを全部断ってサインしたら、態度がコロッと変わって、合コンもなしです。まあ、釣った魚に餌を与えないのは、ある意味でデキる男にありがちなことですが。

岩瀬 その頃、心がけていたことは何ですか?

藤沢 とにかくね、一生懸命やることだけですよね、言われたことをとにかく。

岩瀬 余計なことを考えず。

藤沢 考える余裕もありませんね。半年ぐらいしたら、言われたことはすぐパッとできるようになったんですよね。それで上司がだんだん信頼してくれるようになった。最初は、理不尽な要求を次々としてきて、出来ないとすごく怒られて、それが辛くて辛くてしょうがなかったんですけど、だんだんむずかしい指示であればあるほど、それが快感になっていったんですよ。1年ぐらい経つと、上司が指示を出す前から、次にどんな指示が来るのか完全に先読みできるようになった。指示が来る前から「はい、もう出来てます」みたいな。

 上司は僕のことが可愛くなったので、いろいろとこの業界でのキャリアや市場の分析で、本になんか書いていない、本当に大切なことを腹を割って話してくれるようになりました。それらは今でもとても役に立っています。

 こうなってくると、上司の仕事もはかどるし、お互いに信頼関係もできますから、僕たちのチームはすごく生産性が上がって、その分野で国際的に高く評価されるようになっていったんですよ。

岩瀬 藤沢数希著『社畜の教科書』が作れそうですね(笑)。

(かつて藤沢数希氏は自身のTwitterで『入社1年目の教科書』を「良き社畜になるためには大変参考になる」とコメントしていました)