藤沢 ロジカルシンキングだかなんだか分かりませんが、指示されたことに対して理詰めで、これは間違っているなんて言う部下はやっぱりダメなんです。上司がバカなことを言ってもね、バカを承知で終電まで残って作業して、ちゃんとやって見せてくれる人が可愛いんですよ。

岩瀬 似たような話で、僕、「死んでもやれ!」と言われたことがあるんです。かつての職場にいた人の言葉です。「俺たちからすると、賢いかどうかはどうでもいいんだよ。頼んだことを絶対やってくるヤツが可愛い」って言われたんで、同じですよね。

藤沢大企業だと賢い人はいっぱいいるから、希少価値はないんですよね。恋愛とキャリアは同じです。この人、と決めたら、1年ぐらいは騙され続けて、相手の完全な信頼を得る。そうすると相手も腹を割って、本当に大切なことをいろいろ教えてくれる。キャリアで言えば、それはマニュアルなんかに書いていない、本当に大切なノウハウだったり、恋愛だとそれは本当に大切な絆になったりします。

岩瀬 でも、やっぱり騙され続けるだけではダメじゃないですか。

藤沢 裏切るのは、最後の最後に1回だけです。恋愛も途中で駆け引きなんかしたらダメで、最後の最後まで都合のいい女でい続ける。

 僕の場合、チームのヘッドはもちろん上司で、表に出るのはいつも上司だったんですけど、あのチームがあんなに生産性が高くて、すごいことを次々とやるのは、ジュニア・アナリストが優秀だからだ、なんていううわさがマーケットで広がった。そうすると、ライバル銀行が引き抜こうとしますよね。

 結局、僕は年収がほぼ2倍というオファーを受けて、別の外資系投資銀行のある部署のヘッドとして転職することになりました。この時に、本当に最後の最後に1回だけ、上司を裏切りました。いいチームだったし、僕は上司のことを仕事の上でも、人としてもすごく尊敬していたので、本当に辛かったけど、やっぱりプロとして前に進まざるをえません。

岩瀬 最後まで騙されたやつが勝つんですか。面白いですね。

 最後に、まじめにまとめたいと思います。

 藤沢さんいわく、入社1年目は、上司に可愛がられる存在になりましょうということ。 それは愛想を良くせよとか上司にゴマをすれという意味ではなく、仕事において上司の「役に立つ」存在になれということ。それが結果として、2、3年後の自分自身の価値を高める、自分の利益につながるのだということです。ありがとうございました。