今回の春闘で賃上げ率「3%」を言ったのは、日銀が2%の物価目標を掲げていますから、賃上げ率が少なくとも物価上昇率を上回らないと消費は増えないという理由からです。

 しかし、本当に消費を増やすためは実質可処分所得を上げないといけません。例えば、給料が上がっても、社会保険料負担が増えるのでは意味がない。保険料がこれ以上、上がらないように、医療や介護の効率化も合わせて進める社会保障制度の改革が必要になります。

──経営者にも、人件費抑制や非正規化などをやり過ぎたという反省があるのでしょうか。

 これまではそうせざるを得なかった。賃金を上げたかったけれど、グローバル競争や為替のことを考えると、なかなか怖くてできなかった。生き抜くために大変だったのです。それが、ようやく余裕が出てきたということだと思います。

 それと、バブル崩壊後は、コスト削減などの“デフレ経営”を上手にやる人が経営トップになることが多かったということもあるでしょう。

 日本の経営者は、サラリーマン経営者が多いので、みんなが右へ行くと右に行ってしまう傾向が強い。そういう意味では、今、企業はコストカットを中心とした考え方から脱皮しようとしており、そうした流れが始まると一気に行く可能性があります。

賃上げや働き方改革は
官製でなく自分たちでやるべきこと

──賃金の水準や、収益を労使でどう分配するかに関しては、まさに企業経営の根幹なのではないでしょうか。

 正直、政府に言われなくても、賃上げにしても働き方改革にしても、労使で話し合って自分たちでやるべきことです。

 ただ、賃金を上げるには、生産性も上げていく必要がある。だから春闘の賃上げというのは、来年も賃上げができるようにお互いに頑張って生産性を上げていこうという、いわば労使間の「アコード(協定)」だと思っています。

 生産性を上げ、付加価値の高い製品作りにシフトしていこうとするときに、経営者が一番やらなければいけないことは、「人材への投資」です。人にお金をかける、いわば「人本主義」です。デジタル化が進み、AIを活用する時代になっていく中で、賃金を上げていい人材を確保する、また研修などを通して人材を育成するといったことは、企業の競争力につながります。