また一方で、社員が健康でなければ、生産性は上がらないし、発想を豊かに仕事ができるようにしなければ、高付価値の製品も作れないわけです。サントリーでも仕事のやり方を変えるのは、競争力をつけるという目的のためにやっています。

 賃上げや働き方改革は、まさに経営戦略であり、企業経営のど真ん中の改革のはずなのに、どうして「官製」になってしまっているのか、経営者はよく考えなければなりません。

──人材を確保するための「高賃金経営」は海外の企業でもやっており、政府が政策としてやっている国もあります。ただ一方で所得格差が拡大する問題もあります。

 人材確保や、働き手の意欲を高めるには、賃金で報いるのは当然ですが、「面白い仕事ができる」という軸も必要だと思います。

 また、賃金が高いというだけでなく、仕事のやりがいがあるとか、子育てができるとか、長い間、働けるということも大事です。農耕民族である日本人の意識を考えれば、日本ではセーフティネットが充実していること、つまり雇用や賃金の安心が得られている状態の方が、中長期的に製品開発などに取り組め、生産性上昇につながる面があります。

 つまり、賃上げも重要ですが、社員に安心や安定を与えることも経営者の重要な役割です。ただ安定したセーフティネットを持てる企業になるには、企業は成長し続けなければなりません。