「あなたが先祖代々から受け継いだ精神性が何か、考えたことはある?
それを大事にしなさい。
人がその血族に生まれるのは、その血族が代々受け継いだ精神性を継承していくためなの。それを人生で実践していくことが大切よ」
「それはご先祖さまとか神さまとかが教えてくれるのですか?」
「いいえ、自分で見つけるのよ」
「自分で? でも、どうやって見つけたらいいのかがまったくわかりません」
「だから、あなたは何をしたいの? この人生で何をしたいの?」
すると、大城さまはしばらく天井を仰ぐようにしていた。やがて、おもむろに口を開くと、
「でも、あなた、ご先祖さまから今、いろいろ教わっているんじゃないの?」
「えっ、おわかりになるんですか?」
「これが私の生まれた目的だからね」
そう言って大城さまはくすりと笑った。
一体、ボクは何をしたいのか?
これまで、叶えたい理想ばかりを考えてきたけれど、自分が人生で何をしたいのかなんて考えたこともなかったし、それが運とどう関係してくるのだろうか?
「ボクは、運がよくなれば、イイことばかり起きると思っています」
「そうね。ただ、もし、あなたが大成功したとしても、それでも苦労や悩みはその都度出てくるものだからね」
「ラクはできない、ってことですか?」
「ラクの定義にもよるけど、あなたが考えているようなラクはできないでしょうね。
あなたは、何でもスピリチュアルみたいなもので救われるものだと思っているようだけど、それは大きな勘違いよ」
そうなの? 助けてくれないの?
「そしてね、もっと自分に自信を持たないと。自信を持てないのは、しっかり社会と向き合っていないからよ。
あなたにとっての成功が、山奥にこもって独りで悟りを開きたいということなら今のままでもいいけど、あなたはこの現実社会で成功したいのでしょ?」
「成功したいんです! 決して仙人になりたいわけじゃないです!」
「あなたの人生は、あなたのもの。運をよくして成功したいなら、しっかりと生き方の理想を描かないとね」
「生き方の理想……ですか」
「生き方の理想を描く時には、
自分の人生で一番時間を割いてきたこと、
一番時間を割いて考えたことを思い出すといいわ。
それを見つけて実践すれば、人生は変えられるから」
そう言うと大城さまはボクから視線を外し、また折り紙を始めた。
ボクが自分の人生で一番時間を費やしてきたこと?
うーん、何だろう?