「突然の通告」は
相手の混乱を引き起こす

「薄れたこともあり」と、ほかにも理由があるであろうことを匂わせる表現も逆効果だ。仮に、ほかにも細かい理由があったとしても、「信頼関係は崩れ、修復し難いレベルに達したことが一番の理由だ」という表現をすれば、ここまでハリル氏を興奮させることはなかったに違いない。「○月○日に起きた○○の事例に見られるように」と、具体的な事実を突き付ければ、なお明快だ。

 次に問題を感じたのは、「総合的に評価して、この結果となった」という言い回しだ。「総合的」という表現は、実際にさまざまな理由があったとしても、解任する相手へのコミュニケーションとしては、まったく不適切である。「はっきりとは言えません」、「はっきりとは言いません」、「具体的な理由はありません」という意味に受け取られかねない。

 理由をはっきり言わずに、解任という重大事を相手に納得させることなどできるはずもない。単なるコマとして使われた揚げ句に、ゴミ箱に捨てられたという反応が起きてしまうことも無理はない。

 さらに、「突然の通告」も問題ではないだろうか。実績がどうであれ、仮に理由が明確であったとしても、突然契約解除を突き付ければ、相手は動転するのが当たり前だ。日本サッカー協会内部では数ヵ月前から検討していたというが、検討していたということと、本人とコミュニケーションしていたということは全く異なる。

「選手とのコミュニケーションの問題がある。協会としても支援するので、手を打ってくれ」と改善を促したり、「コミュニケーションの問題が信頼関係に影響を与えている。このままでは、協会としても何らかの手を打たなければならない」、「遠征で○勝以上を上げないと解任もあり得る」、「このままいけば、不本意だが解任せざるを得ない。○○までに○○を○○のレベルまで改善してくれ」――というような、段階的な予告をして初めて、相手との間に、ある程度の共通認識が形成されるものだ。