2017年3月頃より白熱している受動喫煙規制に関する議論。自民党たばこ議員連盟の強い反対に合い、厚生労働省による健康増進法改正案が骨抜きになったのは記憶に新しい。
しかし、受動喫煙規制に反対する主張はまったく科学的根拠(エビデンス)に基づいていないと、慶大准教授の中室牧子氏、UCLA助教授の津川友介氏は指摘する。「国会議員が自身の周辺の声だけを拾って政策を形成する前時代的な議論だ」と辛辣だ。これまでの議論を整理しつつ解説する。

議論がもつれにもつれた
受動喫煙規制

(写真はイメージです)

 2018年4月20日、日本経済新聞朝刊に「従業員雇う飲食店禁煙 都条例案、大幅な規制強化」と題する記事が掲載された。これに驚いた関係者は少なくなかったはずだ。

 たばこを吸う人が吐き出した煙(副流煙という)に含まれる有害物質によって、たばこを吸わない周辺の人による間接的な「受動喫煙」。過去オリンピック開催国を中心に、海外では受動喫煙を防止するため、公共機関や飲食店などでの屋内の全面禁煙が実施されてきた。

 一方、日本はといえば、世界保健機関(WHO)から受動喫煙対策が「世界最低レベル」と警告されるほど、受動喫煙に対する意識は低い。しかし、2020年の東京オリンピックを見据え、2017年3月に当時の塩崎恭久厚生労働大臣の下で、受動喫煙を防止するための健康増進法改正案が議論された。

 しかし、今は2018年の5月である。1年以上前に始まった議論がここまでもつれこんでいるのだから、この改正案についての議論がいかにヒートアップしたのかがわかる。

 2017年に塩崎元厚生労働大臣を中心に出された健康増進法改正案は、従来、努力義務となっていた受動喫煙規制を強化し、「30平方メートル以下のバー・スナック等は例外とし、それ以外の飲食店はすべて屋内禁煙(ただし消煙装置などのある専用の喫煙室を設置する場合はその中でのみ喫煙可)」というものだった。

 しかし、与党である自民党内には約280人近くもの国会議員が参加する「自民党たばこ議員連盟」なる議員連盟があり、「たばこ産業と販売者の生活を守る」ことを理由に、これに猛反対した。たばこ議連が示した対案は、飲食店に「禁煙」か「喫煙」か「分煙」かの表示を義務化し、利用者が飲食店を選択するというものであったほか、公立学校や病院などにも敷地内に喫煙室の設置を認めるという内容が含まれているなど、受動喫煙を防止するどころか、喫煙を推奨しているのかと思えるような内容でもあった。