セブンVSアマゾン

視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のシニア・エディターである浅羽登志也氏がベンチャー起業やその後の経営者としての経験などからレビューします。

米国トイザらスを襲った「アマゾンエフェクト」

 2018年3月、米国の玩具販売大手「トイザらス」は経営再建を断念、全700店舗を閉鎖もしくは売却するという事業の清算を裁判所へ届け出た。

 同社は、アマゾンに顧客を奪われたことで経営不振に陥ったというのがもっぱらの見方だ。

 実は以前、トイザらスはアマゾンで玩具を販売する唯一の業者だった。しかし、アマゾン側はやがて、トイザらス1社では玩具の品ぞろえが不十分だと判断。他の玩具業者にも出店させ始めた。

 そのためトイザらスは、独自にオンラインショップをオープンし、アマゾンに対抗することにした。だが、在庫が少ない上に、工夫の少ない画面デザインが飽きられ、あまり利用されなかった。

 結局、他の玩具販売業者のおかげで在庫が充実し、購買意欲がそそられる魅力的なサイトデザインのアマゾンへの顧客の流れは止められなかったのだ。

 これはレアケースではない。アマゾンが書籍から家電、食品、ヘルスケアなど取扱品目を拡大するにつれ、それぞれの業界の主要プレーヤーだったリアル店舗の業績に影響を与えている。

 これが「アマゾンエフェクト」と呼ばれる現象だ。

 本書『アマゾンエフェクト!』では、実際にアマゾンエフェクトと戦ってきた著者が、その脅威にいかに対抗すべきかを論じている。

 著者の鈴木康弘氏は、セブン-イレブン・ジャパン創業者の鈴木敏文氏の次男である。大学卒業後は富士通でシステム開発・顧客サポートに従事。その後ソフトバンクに転職し、営業、新規事業企画に携わる。そして1999年にイー・ショッピング・ブックス(現・セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役に就任する。