モテる、歌って踊れる鉄工所

 私は、山本精工に入社して3年後に工場長になりましたが、油と削りカスにまみれた自分のみすぼらしさに嫌気がさし、いつも「女の子にモテる鉄工所にしたい」「歌って踊れる鉄工所をつくりたい」と本気で思っていました。

 しかし、単純労働の不条理に耐えかね、社員に向かって、

「社員が誇りに思えるような、夢の工場をつくるぞ」
「油にまみれるのではなく、白衣を着て働く場所にしてみせるぞ」

 と声高に呼びかけてみたものの、反応はなし。
 私以外、誰も信じていなかったのでしょう。社員から、

「工場長!鼻の穴まっ黒にして、何バカなことを言ってるんですか。爪もこんなに汚れていて、タワシで洗わないとあかんのですよ。頭から爪の先まで油まみれになっているのに、白衣なんか着てどうするんですか!」

 そんなあきれ声が聞こえてきても、私は意に介さなかった。
 なぜなら、

『変わりたい』という気持ちを捨てなければ、運命に抗(あらが)うことができる」
「嘘も、100回目は本当になる」

 と信じていたからです。これを、元ヤンキー・暴走族の東京オフィス支社長・静本雅大はどう思っていたのか?