例えば、今回当選枠が増やされる3人区の埼玉県選挙区がよい例で、2013年に行われた選挙結果を見ると、自民、民進(現国民民主党)、公明が仲良く1人ずつ候補者を出して全員当選している。私たちが選挙に行こうが行まいが、選挙が始まる前から、順序が変わることこそあれ、当選者の顔ぶれはほぼ決まっているのが参院選だ。

 当 関口昌一 自民党 898,827票
 当 大野元裕 民進党 676,828票
 当 西田実仁 公明党 642,597票
 落 伊藤岳  日本共産党 486,778票
 落 沢田良  おおさか維新の会 228,472票 他

 これが4人枠になれば、次点の共産党が勝つのでは、と考える方もおられるかもしれないが、当選枠が広がれば、当然自民党は2人の候補者を擁立するだろう。ここで、関東においては支持層が自民党寄りのおおさか維新の会が候補者擁立を見送れば、2人の議席は自民党のものになるのだ。

 一方、「全国比例」では、票を稼ぐことができる有名人が有利である。その証拠に、谷亮子議員(元柔道選手)、アントニオ猪木議員(元プロレスラー)、橋本聖子議員(元スケート選手)、三原じゅん子議員(元タレント)、今井絵理子議員(元歌手・SPEED)と、有名人議員がずらりと顔をそろえる。これに加えて、今回の改革で政党が勝手に当選者を決められる「優先枠」を2人つけるというのだから、もはや有権者の意図などあったものではない。現職の議席を死守するための露骨すぎる愚策だ。

 このように、選挙制度を丁寧に解説すれば、今回の選挙制度改革は自民党を利するための党利党略でしかないことがわかっていただけよう。

 そもそも、参議院の起源は、戦前の「貴族院」だ。「貴族院」は、1890年から1947年の57年間にわたって存在したが、そのうち30年間にわたって、第16代徳川家当主の徳川家達が貴族院議長を務めている。また戦後、貴族院が廃止されたときの議長も第17代徳川家当主の徳川家正議員だ。

 この事実が象徴しているように、貴族院議員とはその名のとおり、「貴族」すなわち当時の既得権益者へ与える役職として創られたと言っても過言ではない。そして戦後、この「貴族院」は「参議院」へと名前を変えた。今、現職のために「特別席」を用意するというのは、今なお参議院が貴族院と同じような存在でしかないことを露呈してしまっている。

 参議院議員が、一度当選してしまえば6年間安定して税金で高給をもらえる「おいしい職業」でしかないならば、「代議士」と呼ばれる日は永遠に来ないだろう。